ゲーム紹介
■概要
書名:ブレイド・オブ・アルカナ The 2nd Edition
著者:鈴吹太郎/F.E.A.R
発売元:エンターブレイン
価格:4000円
判型:B5判/304P/タロット22枚+8枚
公式サイト http://www.fear.co.jp/
闇が色濃く支配する異世界“ハイデルランド”で英雄伝説を紡ぐ、本格的ヒロイック・ファンタジー(英雄幻想譚)TRPG。
PCたちは“聖痕(スティグマ)”に選ばれた英雄となって、闇の鎖に縛られ堕落した“殺戮者(マローダー)”や強大な魔神に立ち向かうのだ。
刻まれた3つの聖痕が生み出す奇跡を武器に、全ての聖痕をいつか天空に還すその日まで…。
■システム
このゲームでの基本的な判定は全て20面ダイスで行う。
したい行動に適した技能のレベル個数(1〜3個)のダイスを振り、1個でも対応する能力値以下の目を出せば成功となる。
また、キャラクターごとに特技と呼ばれる英雄ならではの能力(魔法や剣技など)を習得しており、特技同士を組み合わせて更に強力な技に昇華させられるのも大きな特徴である。
そして、PCに与えられる最も大きな力――――“聖痕(スティグマ)”
PCの肉体に刻まれる3つの不思議な紋様は、所持者の『過去・現在・未来』を象徴している。
これはその昔、闇の鎖に砕かれた使徒(アルカナ)たちの欠片であり、PCたちが引き起こす奇跡の源なのだ。
…具体的に言うと、キャラクターは22種類のアルカナ(※)から3つを任意に選び、それぞれを過去・現在・未来に割り振る。
そしてアルカナごとに設定された奇跡を合計3つ分取得できるわけだ。詳しい解説は次の『キャラクター』の項を参照。
主人公たる聖痕者(スティグマータ)にとって最大の敵は…殺戮者(マローダー)。聖痕を持ちながら魂を闇に堕とした者たち。
聖痕者たちの操る特技や奇跡は強力だが、強すぎる力は時に人を惑わせる。
強力なものになるほど、代償として人間としての魂の尊厳(ルール上は尊厳値という)を削ることになる。
使いすぎれば、たとえそれが善意からした行為でも聖痕者の魂は闇に囚われ……新たな殺戮者となってしまう。
殺戮者は、魂の許容限界を超えた大量の聖痕を身体に宿す。更なる力を求めて聖痕者を殺し、その聖痕を奪い取る。
通常の聖痕者(PC)が宿す聖痕は3つ、奇跡も3回まで。遥かに強大な力を持った敵を斃すため、PCたちは力を合わせるのだ。
(※)…このゲームにおけるアルカナとは、唯一神の創った22の光の使徒の総称であるが、同時にキャラクターの生業・種族を意味する言葉でもある。それぞれのアルカナは戦士や魔術師などの特性を持っており、その加護を受ける者たちも同じ名で呼ばれるのだ。
もちろん、タロットカードの大アルカナに引っ掛けたネーミングでもあるのだが(笑)
キャラクター
上でも述べたが、このゲームでは22種類のアルカナから3つを選んでキャラクターを作る。
合計が3つでさえあれば良いので、同じアルカナを2枚以上重ねても良いし、3つとも違うアルカナでも構わない。
また、過去・現在・未来のどこに配置するかで、同じ組み合わせでも全く違うキャラクターになりうる。
例えば『アルドール(闘士)=ウェントス(旅人)=コロナ(王)』のアルカナを持つ男がいたとしよう。
彼は幼い頃を剣闘士奴隷として過ごし、後に自由を得、遂には自分の王国を手に入れる…という物語になる。
しかしこれが『コロナ(王)=アルドール(闘士)=ウェントス(旅人)』だったら?
王家に生まれながら陰謀によって剣闘士に落とされ、故郷からも追放されて流浪の旅に出た悲運の王子の出来上がりである。
他にもいろんな解釈が考えられるので、好きな物語の登場人物を当てはめて遊んでみて欲しい。
では、各アルカナの解説を。
■−、ウェントス Ventus
自由気ままに放浪する旅人。旅芸人や吟遊詩人など。
使徒ウェントスの加護を受ける彼らは、何者にも縛られない身軽さと、窮地を切り抜ける幸運の持ち主。
与えられる奇跡は∵神移(ワールウインド)∵
風よりも速い足を持つ使徒ウェントスの力を借り、あらゆる危険や拘束を逃れて好きな場所へ瞬時に移動できる。
■1、エフェクトス Effectus
自然の諸力を操る“元力使い”。その能力は血統によって受け継がれ、人々に畏れられる。
八つの元力(闇、炎、光、氷、水、風、雷、虚無)の内どれを使えるかは血統で決まるが、いずれも破壊力に優れている。
与えられる奇跡は∵大破壊(ラヴェイジ)∵
使徒エフェクトスは原初のエネルギーそのものであり、その存在の一部を現出させる事で大いなる破壊をもたらすのだ。
■2、クレアータ Creata
錬金術師によって造り出された人工生命、あるいは自動人形(ヒト型とは限らないが)。
造られた者であるが故に通常の生物ではありえない様々な機能を備える。だが、その心が本物かどうかは本人にさえ判らない。
与えられる奇跡は∵戦鬼(アクセラレーション)∵
使徒クレアータは完全な生命を持たないが故に、肉体の限界を無視して目にも留まらぬ速さで動くことができる。
■3、マーテル Mater
全能なる神の娘、聖母の教えを継ぐ聖職者。祈りによって他人を癒し、護る力を授かっている。
伝統主義のシニストラリック(旧派)と原理主義のウェルティスタント(新派)があるが、どちらでも能力は変わらない。
与えられる奇跡は∵再生(リバース)∵
使徒マーテルがもたらす奇跡は、自分以外の誰かを完全に癒す。例え、それが死からであっても。
■4、コロナ Corona
貴族や王族などの血を引いていたり、その地位にある者。あるいは未来において“王”となるべき運命を持つ者。
交渉や指揮能力に優れ、多数の部下や財産を所持できる。未来の王なら、絶対的なカリスマを現す《王者の相》という特技も。
与えられる奇跡は∵紋章(エンブレム)∵
使徒コロナは全ての使徒のリーダーであり、聖痕を持たない者は全てそのカリスマの前に絶対服従する。
■5、フィニス Finis
時の因果から完全に切り離され、輪廻転生の輪の外にいるべく運命付けられた不死者。
不老不死の彼らには毒も病も意味をなさない。暴力で身体を破壊されれば、魂は転生することなく無に帰する。
与えられる奇跡は∵不死(イモータリティ)∵
使徒フィニスは神によって定められた時の監視者。肉体が完全に消滅させられようとも、復活することができる。
■6、エルス Erus
魂を分け合った獣(ファミリア)と共に生きる者達。
ファミリアの容姿や能力は様々で、サポート用にも戦闘用にも育てられる。また、ファミリア自身を演じることも可能。
与えられる奇跡は∵心友(ファミリア)∵
使徒エルスは二つの身体に一つの魂を持つ。この奇跡は自分の半身であるファミリアを完全な状態で呼び寄せる。
■7、アダマス Adamas
誰か、あるいは何か大切な存在を護る運命を持つ者達。いわゆる騎士だが、必ずしも世俗的な意味での称号を意味しない。
騎馬で突撃するなど強力な攻撃用特技も存在するが、何よりその能力は盾を用いての防御に特化している。
与えられる奇跡は∵無敵防御(インヴィンシブル)∵
使徒アダマスは“守護者”として創造された。彼の持つ“不破の盾”は、いかなる攻撃をも受け止め無効化する。
■8、アルドール Ardor
戦いと血を求める純粋な戦士。ひたすらに強さを追求し、その強さを存分に振るう戦場を求める者たち。
恵まれた肉体の力で正面から敵をねじ伏せる、攻撃に特化した戦士。物理的な破壊力では最強。
与えられる奇跡は∵絶対攻撃(フェイタル・ブロウ)∵
使徒アルドールは造物主の剣。あらゆる守りを打ち砕く無敵の剣は、同じく奇跡によってしか防げない。
■9、ファンタスマ Phantasma
言霊を操る者…“言霊使い”。彼らの言葉は人の心を幻惑し、世界のありようさえも変質させる。
幻で攻撃したり他者の精神状態を操る術が使える。また呪文で魔獣を召喚し、攻撃させることもできる。
与えられる奇跡は∵真名(トゥルー・ネーム)∵
使徒ファンタスマは“名づける者”。物の本質を示す真名を入れ替えて、奇跡や攻撃の対象を別の対象に変えさせる。
■10、アクシス Axis
理論の研究と思索によって身に付けた知識で魔法を操る者たち。一般的に、魔術師や賢者といえば彼らを指す。
単独でも攻撃・補助などの多彩な術を使えるが、他の魔法系統と組み合わせることで効果を劇的に高めることができる。
与えられる奇跡は∵拡大(アンプリフィケイション)∵
使徒アクシスは魔術を初めとする知識の礎である。その力は他の行動を増幅し、効果範囲を大幅に拡大する。
■11、レクス Lex
犯罪者を追い詰め、捕らえる賞金稼ぎ。何かを追い求める者や復讐に生きる者も使徒レクスの加護を受ける。
相手を殺さず無力化する特殊な戦闘術に長け、情報収集能力や推理力など捜査活動に役立つ特技が多い。
与えられる奇跡は∵呪縛(バインド)∵
使徒レクスは造物主が定めた法の番人。その力は他者の能力に縛めをかけ、一時的に無力化する。
■12、アクア Aqua
肉体を極限まで鍛え上げ、格闘術で戦乱の世を戦い抜く者たち。生涯を修行に捧げる、愚直なまでに真摯な求道者。
裸同然で戦うため不利に見えるが、“気”を用いた独特の武術は攻撃・防御の両面で優れた力を発揮する。
与えられる奇跡は∵因果応報(サクリファイス)∵
使徒アクアは報いの使徒。自分に対して与えられた影響を相手にも与える…良い事はそのまま、悪い事なら倍にして。
■13、グラディウス Gladius
殺しの技を極めた者、すなわち暗殺者や剣士が使徒グラディウスの加護を受けた者たちである。
彼らの剣技は、超人的な速さと正確さで相手の急所を突き、速やかに命を奪う。まさしく死神の剣である。
与えられる奇跡は∵死神の手(デスズ・ハンド)∵
使徒グラディウスは絶対なる“死”そのもの。その加護を受けた刃は巨大な龍の心臓さえ一撃で止める。
■14、アングルス Angulus
無垢なる者。周囲に愛されて育ったが故に汚れなき心を持った者たち。裕福な家に生まれ、庇護されて育った者が多い。
その輝くばかりの清らかさは他人の心を照らす。特技も自分の実力より、「対象がアングルスを護りたくなる」もの中心。
与えられる奇跡は∵天真(イノセンス)∵
使徒アングルスは希望の象徴。彼女の持つ無限の善性は、害意を伴うあらゆる奇跡や魔印の効果を無効化する。
■15、ディアボルス Diabolus
伝説の剣や鎧など、力ある武具…すなわち“魔器”を持つ者たち。あるいは意志を持った魔器そのもの。
特技が表すのは魔器の能力で、威力や防御力を高める他に、空を飛んだり、魔器に知性や別の姿を与えたりできる。
与えられる奇跡は∵魔器(アーティファクト)∵
使徒ディアボルスは使徒の道具として創られた。奇跡を使えば遠くにあろうと破壊されていようと、完全な姿で所持者の元に戻る。
■16、フルキフェル Furcifer
人間以外の“言葉を持つ者たち”、つまり異種族。獣人(ウルフェン)や森人(エルフ)、他さまざまな種族がいる。
特技は他の種族の特徴・能力を表すもの。獣人なら肉体的能力に、森人なら主に精神的能力や森での活動に優れている。
与えられる奇跡は∵模造(イミテーション)∵
使徒フルキフェルはあらゆる生き物の雛形。不定・混沌である彼らの奇跡は、他の奇跡の効果をそのまま再現できる。
■17、ステラ Stella
英雄たちの介添え人。他者を支え、導く者たち。ステラがいることで、英雄はその真価を発揮できる。
的確な助言を与えたり魂を汚す闇を祓ったりと、サポート役として極めて有能。ただし単体での戦闘力は殆どない。
与えられる奇跡は∵活性化(エンハンスメント)∵
使徒ステラは全ての者の助けになるべく最後に創られた。その奇跡は、他の奇跡を使った聖痕に再び力を与える。
■18、ルナ Luna
盗賊、あるいは暗闇に潜む暗殺者。夜を司る使徒ルナは、同じく夜に生きる者たちに加護を与える。
スリや軽業・隠密などの他に、敵の意表を突いての不意打ちや毒を用いた暗殺術に長けている。
与えられる奇跡は∵不可知(インコグニション)∵
使徒ルナは秘密と夢の守護者。その奇跡は、姿を消し去り誰にも気づかれることのない隠密の力を授ける。
■19、デクストラ Dextra
真理の探究に生涯を捧げる錬金術師。彼らが高度な技術によって造りだした物品は、無知な者には魔法のように映る。
彼らの特技は錬金術で造り出した物品を表す。銃に回復薬、携帯ジェットに人造人間など様々だが、回数制限に注意。
与えられる奇跡は∵爆破(デヴァステーション)∵
使徒デクストラは主の命を果たすために自分で道具を造り、また破壊した。この奇跡はあらゆる物品を完全に破壊する。
■20、イグニス Ignis
弓兵や狩人など、射撃武器に長けた者たち。遥か遠くから死を与える弓の優秀性は、騎士から「卑怯者」呼ばわりされるほど。
大量の矢を雨霰と降らせたり、精密射撃で鎧の隙間を射抜いたりと凄まじい特技が多い。接近戦には弱いが(笑)
与えられる奇跡は∵天の火(セレスティアル・アロー)∵
使徒イグニスは人に罰を与えるため創られた“裁きの炎”。その加護を受けた矢は、確実に敵を捕らえ、致命傷を与える。
■21、オービス Orbis
古代に失われた“秘儀魔法”の使い手にして探求者。彼らは伝説の秘術復活に、人生の全てを賭けている。
秘儀魔法は聖痕を描くことでその象徴する力を引き出す。回復・攻撃・補助など、その力は強力かつ多岐に渡る。
与えられる奇跡は∵封印(シジル)∵
使徒オービスは全ての使徒の力を管理していた。その奇跡は、一時的に他の奇跡の効果を打ち消し、使えなくする。
かつて、世界は楽園だった。
唯一神アーは世界を創り、権能者アルカエウスを生んだ。更に人の祖先たるアルカイを創り、大地に住まわせた。
アルカエウスはアーに従順に仕え、アルカイ達はアルカエウスに仕えて、平穏な…秩序ある時代が続いた。
だが、自由意志を与えられていたアルカイは、やがてアーを裏切った。禁忌だった闇の力に触れたのだ。
闇は鎖となってアルカイたちを捕らえ、大地に縛り付けた。かくてアルカイの子孫である人間たちも天に帰る術を無くした。
アルカエウスのうちアルカナ(光の使徒)と呼ばれる22の使徒は、アルカイたちを救い導くために天を離れ、地上近くまで降りてきた。彼らのある者は太陽に、ある者は月に、他の者は星座となって世界を照らした。
しかし――――闇はあまりに強大で、アルカナ達の力でも人々を救うことは出来なかった。
それどころか、闇の鎖はアルカナまでも捕らえ、その身を粉々に打ち砕いた。
天空から星は消え去り、黒点で虫食いのようになった太陽と、欠けて弓のように痩せた月が残った。
世界は闇に覆われ、その暗黒は今も続いている――――これを人々は大皆触と呼ぶ。
光を失った世界では魔物が闊歩し、作物の育ちが悪いために飢饉も頻発する。飢えた者は生きるために他者を襲い、傷ついた者は苦しみを忘れるために欲望を、力を追い求めてまた闇に囚われる……昏く、絶望に満ちた世界。
この真っ暗な世界の中で、しかし全ての希望が潰えたわけではなかった。
砕かれ、大地に降り注いだ使徒の欠片は、聖痕となって地上に住むものの一部に宿るようになったのだ。
聖痕者は戦う。闇に囚われた聖痕を開放し、天へ還すために。
全ての聖痕を開放した時、人の罪は許されアルカナ達も復活するのだという。
転生と贖罪を繰り返しながら戦い続ける英雄たち――――彼ら聖痕者だけが、この歪んだ運命を正すことができるのだ。
……とまあ、雰囲気としてはこんな感じでしょうか。<いきなり素に戻る奴
PCは聖痕者として、力に囚われ悪事を繰り返す殺戮者を斃す…これがシナリオの骨子になります。
システム自体が――特技や奇跡も概ね殺戮者との戦いに特化されているので、「ただの純粋な宝捜し」や「斃すべき悪人のいない、ほのぼのコメディ」などのシナリオは…はっきり言って不向きです(<実は以前やって失敗した)
しかし、ドラマ性の強いシナリオをやりたい時や、映画・小説の登場人物のような超人的活躍をしたい人には凄くお奨めです。
何と言っても、作ったばかりのキャラクターで『百発百中の弓の名手』や『龍を従えた騎士』や『手練れの魔法剣士』なんていう特徴ある主人公を演じられるファンタジーTRPGは、これくらいのものですから(笑)