ゲーム紹介
■概要
書名:ソード・ワールドRPG完全版
著者:清松みゆき/グループSNE
発売元:富士見書房
価格:3700円
判型:A4判/352P
公式サイト http://www.groupsne.co.jp/
架空の異世界『フォーセリア』を舞台とした、ファンタジーTRPG。
世界の雰囲気は古代〜中世の西洋がベースで、PCたちは剣や魔法を頼りに怪物退治や遺跡探索などの冒険を繰り広げる。
ルールが洗練されていて憶え易く、小説やリプレイなど世界観や遊び方のサポートとなる書籍も多数あるため、初心者にもとっつき易い。お奨め。
以前アニメ化された【ロードス島戦記】、【クリスタニア】は同じ『フォーセリア』を背景世界としており、この作品の姉妹作とも言える。
■システム
このゲームでは、殆どあらゆる判定が『基準値+2D6』に統一されている。
武器だろうと呪文だろうと『関連する技能のレベル+能力値ボーナス+2D』で判定されるので非常に憶え易い。
またGMにとっても確率計算が簡単で、戦闘などのバランスをとるのも他ゲームに比べると容易なのが嬉しい。
一つだけ難を言うなら、ルールが洗練され過ぎているため、ファンタジー独特の泥臭さや神秘性が薄れたような気がする辺りか。
特に魔法関係では、使った呪文レベルと威力から相手の実力を逆算できたり、「残り呪文使用回数は●回」とハッキリ数値で判りすぎてしまう所など、少し味気ない……と思ってしまう(^^;)
とは言え、この判り易さは『扱い易さ』という大きな長所にもなっているので…まあ、贅沢というものだろう。
それから戦闘でのダメージについて。
上で『戦闘バランスをとり易い』と書いているが……クリティカルには気をつけたほうが良い。
他のゲームにもクリティカルはあるが、ソード・ワールドの場合は特に極端で、理論上は無限大のダメージを叩きだす事ができる。
まあ、それは大げさとしても(笑)このゲームでは敵味方共にヒットポイントがあまり高くないので、クリティカルを2〜3回連発(←よくあるんだ、これが)されると細かい戦闘バランスなど一発で吹き飛んでしまう。
…グラスランナーの少女(5レベルシーフ)が魔獣グリフォンをダーツで瞬殺した時はビビったよ、あたしゃ。
ダイス目はダイス目だからと割り切るのも一つの手だが(私はよくそうする)、もし美しいストーリーを思いついて『斃されると困る敵(好敵手とかラスボスとか)』を出したくなった時は……御用心(笑)
キャラクター
■種族
このゲームでPCとして選べる種族は人間、ドワーフ、グラスランナー、エルフ、ハーフエルフの5種類。
それぞれが一長一短を持っている。
【人間】
最も数の多い種族。
能力値は平均的…と言うより個人ごとのバラツキが激しい。向いてる職業はダイス目次第(笑)
特殊能力などはないが、全能力値24(ボーナス+4)の大台を叩き出せるのは人間だけ。
【ドワーフ】
大地の妖精族。小柄で髭もじゃ、大酒飲みが多い。また、職人としての能力が高い(クラフトマン技能・初期5レベル)
手先が器用で力も強いので戦士向き。更に、完全な暗闇でも見える特殊な視力を有する。
素養が無いので魔術師・精霊使いにはなれないが、精神力が高いため神官技能を取るとサポート役としても有能。
【グラスランナー】
草原の妖精族。人間の子供のような外見をしている。
非常にすばしこく手先も器用なので盗賊・野伏向き…と言うか、最初からそれらの技能を取得している(笑)
植物や昆虫と意思疎通する能力を有する。精神力も高いので、呪歌を取得すると非常に効果的。
ただし素養が欠けているため、呪歌以外の魔法は取得できない。筋力が致命的に低いので戦士も取るだけムダ。
【エルフ】
森の妖精族。細身で繊細な外見と不老(*寿命は約1000年)で知られる。
知性・精神力共に高い、魔法使い向きの種族。精霊使いの能力を最初から取得している。
ただし、神を信仰しないので神官にはなれない。筋力・生命力が低いため戦士にも向かない。
能力的には盗賊向きだが…イメージが(笑) それよりは野外活動のために野伏を取りたいところ。
【ハーフエルフ】
人間とエルフの混血児。両者の特徴を併せ持つ。が、どちらの社会にも馴染めず、迫害されがち。
能力的にも両者の中間で、悪く言えば中途半端。極端に良い所も悪い所も無いので、向き・不向きも殆ど無い。
エルフほどではないにせよ筋力・生命力が低めになるので、屈強な戦士をやりたい人には向かないかもしれない、くらいか。
なお、エルフ社会で育てられた場合は、最初から精霊魔法を覚える代わりに神官にはなれなくなる。
■技能
選択した種族に、数種類の冒険者技能と一般技能を組み合わせることで、多彩なキャラクターを表現する。
このスキル(技能)型とクラス(職種)型を融合した、SW独特の『技能』システムは、解り易くキャラの表現力も高い。
SW初版が出た当時は単機能なキャラを扱う『クラスシステム』が殆どで、SWの技能システムは凄く画期的だった。
何を隠そう、筆者がSWにハマったのも「マルチクラスが簡単にできる!」から。今でも完成度の高いシステムだと思う。
▼冒険者技能
【ファイター(戦士)】
武器・防具を身につけて戦う、戦士としての技能。筋力一杯の装備を使いこなせる技能はこれだけ。他に能がない、とも言う(笑)
成長に必要な経験値が低くてレベルアップも楽なため、他の技能との兼業をお奨めする。
【シーフ(盗賊)】
一般的にはドロボーさん(笑) しかしてその実体は、鍵開け・罠外し・スリからある程度の武器戦闘までこなす万能選手。
動きの妨げになるため、重い武器・鎧は扱えない(故に打たれ弱い)が、冒険中で活躍の機会は非常に多い。
レンジャー・セージ・バードとの兼業がお奨め。防具制限のきついソーサラーやシャーマンとも相性がいい。
【セージ(賢者)】
さまざまな知識・学問に通じていることを現す技能。(母国語・共通語以外の)言語の読み書きもこれで覚える。
毒物やモンスターの能力・習性などの知識は冒険において命に関わることも少なくない、のでパーティ必須。
宝物鑑定などもできるため、パーティに最低一人は高レベルで持っておきたい。
【レンジャー(野伏)】
野外活動の専門家。さまざまな自然の脅威に対応する術を身につけていることを現す技能。
飛び道具の扱いや危険を察知する能力に優れているので、やはりパーティに一人は必要。
敵の不意打ちを防げるのはレンジャーの危険感知能力だけなので、レベルもある程度は上げておくべき。
忍び足や罠外し(野外限定)も出来るが、そのためには重い鎧を装備できない。危険感知だけなら関係ないが。
【バード(吟遊詩人)】
詩を歌ったり曲を奏でたりして金を稼ぐ技能。さまざまな伝承・伝説に通じ、異国の言葉にも明るい。
ただの旅芸人と決定的に違うのは、呪歌という擬似魔法を使えること。
本物の魔法に威力では劣るが、聴衆全ての精神を眩惑する呪歌は時として他の魔法でも及ばないほどの影響をもたらす。
【ソーサラー(魔術師)】
古代魔法王国の遺産である、上位古代語(ハイ・エンシェント)を受け継いだ魔法使いの技能。
最も強力かつ汎用性の高い古代語魔法を習得できる……が、成長の遅さ(=必要な経験値)もナンバーワン(笑)
呪文を唱えるのに複雑な身振りが不可欠なため鎧を着られず、発動具として専用の杖を持っていなければならない。
故に魔法戦士は勧められない。シーフとの相性は悪くないが…成長に必要な経験値を考えると兼業はセージのみが無難。
【シャーマン(精霊使い)】
さまざまな自然のエネルギーを司る精霊たちと精霊語(サイレント・スピリット)で通じ合い、その力を借りる技能。
精霊魔法は最初こそ使い難いものの、3レベル以降は特殊な呪文が増えて冒険には不可欠な存在になる。
単体相手の呪文が多いのも、乱戦では逆に使い勝手が良いと言える。但し、周囲に精霊がいないと呪文を使えないので注意。
必要な経験値はソーサラーの次に多いが、武器・防具の制限は緩いので他の技能と兼業しやすい。
【プリースト(神官)】
世界を創り出した神々を信仰し、その代理人として神聖語(ホーリー・プレイ)を唱え、神の力を行使する技能。
神聖魔法は治療・回復が主で汎用性に欠けるが、負傷の多い冒険者にとって無くてはならない存在である。
自分が信仰する神の意志に反していると、魔法が発動しない事もある。また、信仰心を失えば直ちに魔法の力は失われる。
必要経験値が魔法使いの中で一番低く、武器・防具の制限もないので兼業に向いている。
……と言うより、神官だけだと回復以外に殆どやる事がないので、積極的にファイターなどの技能を取るべきだ(笑)
▼一般技能
マーチャント(商人)、ファーマー(農夫)、フィッシャー(漁師)、クラフトマン(職人)、ハンター(狩人)、ヒーラー(治療師)、
ノーブル(貴族)…etc
要するに、冒険者ではない一般的な職業を表す技能。
ちなみに、技能レベルが1か2だと見習い、3レベルで一人前、5レベル以上だとプロ級の腕前と見なされる。
これは冒険者技能であれ一般技能であれ同じようなもので、最高の10レベルともなると大陸全土でもそれぞれ5人といない。
背景世界
世界創造の神々は最終戦争で肉体を失い、その後発達した偉大なる魔法王国も礎である魔力の暴走によって滅んだ。
今は大小いろいろな王国が群立し、衰退した魔法に代わって武力が支配するようになった『剣の時代』――。
中世の西洋社会に似た雰囲気を持つ、剣と魔法のしろしめす異世界フォーセリア。その一部、アレクラスト大陸が主な舞台となる。
主人公であるPCたちは、人間が未だ足を踏み入れたことのない未開の地…あるいは宝物と危険な罠・怪物が待ち受ける古代王国の遺跡など、様々な冒険を積み重ね成長していく。
最近の(特にFEARの)作品と違って「ストーリーを積極的に支援するためのルール」はないが、その分GMの工夫次第で『暗黒教団や魔神が暗躍するダークな話』から『引き裂かれた男女の愛憎劇』、はたまた『倒すべき悪人のいない日常的ほのぼのコメディ』など、どんなジャンルのシナリオでも遊ぶことが出来る。
大陸を股にかける英雄を目指すも良し、町の片隅で便利屋稼業に勤しむも良し(笑) まだまだ懐深いゲームである。
また別売りのサプリメント『ロードス島ワールドガイド』があれば、小説版ロードス島戦記の世界を舞台に冒険する事も可能である。
同じく姉妹作であるクリスタニアは今やルール自体が絶版だが、Web上ではSWへのコンバートルールを自作しているサイトもあるので、試してみるのも面白いだろう。
■魔法について
この世界では、全ての魔法は魔法語(ルーン)を用いて行う。故に、魔法を操る者たちはルーンマスターと総称される。
魔法の素質は先天的なもので誰にでも扱えるわけではないため、魔法使いは一般人から畏怖の目で見られることが多い。
【古代語魔法】
古代王国の時代に開発・研究された、最も強力な魔法語。しかし古代王国滅亡と同時に殆どの呪文が失われた。
実は神々が世界創造に使った原初の魔法を古代の人間が解析・編纂したものであり、創世の力そのものである。
それ故この世界で最も強い力を秘めており、古代王国の魔術師たちは竜や魔神を従え時空さえ操ってみせた…のだが。
古代王国では魔法を使えない者を奴隷扱いしていたため、現在になっても魔術師への不信感は民衆の心深く根付いている。
【精霊魔法】
フォーセリアは人間たちの住む物質界の他に、妖精界と精霊界から成り立っている。
精霊たちはフォーセリアの自然エネルギーであり、精霊使いは彼らの司る力を呪文で引き出すことで魔法を使う。
精霊自身も神の御業で創られた存在であるため、魔法としての序列は古代語魔法や神聖魔法より下と言える。
但し、それは魔力だけを比べればの話で、自然の力や人の精神に干渉する精霊魔法は決して侮っていいものではない。
【神聖魔法】
かつて神々は最終戦争で肉体を失い、物質界に直接関与できなくなった。
そのため、自分たちの“声(思念)”を聴けるほどの信仰心を持つ者に語りかけ、その意志を代行させようとした。
神の思考形態は人間とは全く異質で理解する事も困難だったが、辛うじてそれに言葉を与えることは出来た。
かくして古代王国期に作り出された新たな魔法語が神聖語である。神官はこの言葉で祈りを捧げることで、神の力を振るうのだ。
ちなみに神官たちだけは、魔法使いの中では例外的に民衆にも広く受け入れられ尊敬されている。
【呪歌】
古代王国期に作られた、魔法の力を持つ歌。現在では吟遊詩人のみがそれを伝えている。
呪歌の効果は、歌が本来持つ“人の心に働きかける作用”を強めたようなものが殆どで、魔法としてはごく弱い部類に入る。
素養も全く必要ないのでグラスランナーでも使えるし、取得しても魔法使いとして恐れられることはない。
だが聴衆全てに影響する呪歌は、使い方次第では(街の住人全てを眠らせたりなど)強力な武器になるだろう。
■神々について
アレクラスト大陸で、特に力が強いとされる六柱の神々(ファリス、ファラリス、マイリー、ラーダ、チャ・ザ、マーファ)を六大神と呼ぶ。
ここでは六大神を始めとした、ゲーム内で主に信仰される神々を簡単に紹介する。
【至高神ファリス】
法と秩序にのっとり、この世に不変の『正義』を齎すよう教える厳格な神。王や貴族など支配者階級に信者が多い。
ファリス信者は戒律に厳しく、固い考えの持ち主になりがち。いわゆる『聖職者』のイメージに一番近いかも。
しかし『絶対の正義』とやらが胡散臭く感じられるからか、プレイヤー間での人気は……今ひとつ(^^;)
【戦神マイリー】
卑怯な行為や臆病な振る舞いを嫌い、正義ある戦いを肯定する勇猛な神。騎士や傭兵などが信仰する。
勇気ある者に戦場での加護を与え、死した後は美しい戦乙女を使者に『喜びの野』へ迎えるのだと言われている。
信者は「人生そのものが戦いである」と考え試練を尊ぶため、ロールプレイの指針が明確で冒険者としても演じやすい。
【知識神ラーダ】
野蛮な行為を嫌い、全ての者に「賢明であれ」と教える神。賢者や魔術師に信者が多い。
教義的な制限は少ない…とはいえ冒険者のやる事って、ことごとくラーダの教義に反するような(苦笑)
特殊魔法もイマイチ地味なものばかりだからか、あまりプレイヤーが選ぶのを見たことがない。
【幸運神チャ・ザ】
人と人との会話や交流を奨励し、幸福をもたらすよう教える神。転じて商売の守護神ともされる。
他者に不幸をもたらすような行為を禁じている。当然盗みも禁止だが、所有者の存在が明らかでなければ良いらしい。
特殊魔法《ラック》がいざという時の保険として非常に有効なため、この神を信仰するPCをよく見かける(笑)
【大地母神マーファ】
自然であれ、と教える大地の女神。農耕や狩りの守護神として農民や狩人、あるいは貧しい人々にも信仰される。
戦いは自衛の場合のみ認められているので、信者は専守防衛が基本になる。
冒険には不向きなようだが、ファリスよりも穏やかなイメージがあるからか信仰にマーファを選ぶPCは意外と多い。
【暗黒神ファラリス】(*PCは選択不可)
自らの欲望を認め、自由であれと教える神。一般には邪神と見なされ、信者たちの多くは保身のため潜伏している。
本来は別に「悪事に走れ」と言ってるわけではないが、結果として信者の多くが悪人になってしまうのは致し方ないか。
基本的に敵役なのでPCは信仰できない……とわざわざ書くという事は、信仰したがるプレイヤーも多かったわけで(−−;)
【芸術の神ヴェーナー】
あらゆる芸術の守護神であり、吟遊詩人の神でもある。大きな勢力はないが大衆に広く信仰され、神殿も時おり見かけられる。
また、歴史をつづる者とも考えられているので運命神としての性格付けもされている。
【盗賊の神ガネード】
もともとは匠の神だったらしく、職人たちにも信仰されている。意外な富をもたらすことから転じて賭け事の神とも。
大きな街では神殿も見かけられることがあるが、勢力は大きくない。
【鍛冶の神ブラキ】
本来は火山の神だったが、鍛冶の方法を人々に伝えたことで鍛冶の神として崇められるようになった。
鉱山で働く者や鍛冶屋に信者が多く、特にドワーフの間では主神とされている。
【破壊と終末の女神カーディス】(*PCは選択不可)
この女神は、現在のフォーセリアを全て否定する破壊神である。その目的は世界そのものの終焉に他ならない。
信者は破壊と殺戮を至上の使命と考え、そのために各地で暗躍している。