第1話

見えるものと、見えざるものと

【前奏 〜始まりの前に〜

(GMの独り言)
 いよいよ新しいキャンペーンの始まりである。
 前回のキャンペーンは最初からPCの裏設定や物語のテーマが決まっていたので、割と一気に突っ走った感があった。
 今回は『出来る範囲で、のんびりと楽しむ』のが目的だから、あまりカッチリ決めてしまわずにやるつもり。
 何しろ、いつプレイヤーが欠けてもおかしくない状況だし(苦笑)…社会人は辛いよ。


 全員がGM宅に集合した所で、さっそくキャラクターを作ってもらう。
 ダイスに念を込める者、無造作に振りまくる者、数値の酷さに「振り直しを要求する〜(涙)!!」と喚く者…様々である。

 ところで【仮面夜会】では通常のキャラ作成ルールに加えて『能力値合計は108まで』というハウスルールを使っている。
 理由は『強力過ぎるキャラクターが出来るのを防ぐ』ため。
 108に限定したのは、六つの能力値が全て18(ボーナス+3)の時ちょうどこの数になるから。

 忘れもしない最初のキャンペーン、ウチのプレイヤーどもは気に入る能力値が出るまでダイスを勝手に振り直し、挙句に『全能力値が20以上!』『器用度と筋力が24!おまけに両手利き(笑)!!』…なんぞという化け物キャラを平気で使ってくれたのだ。

 全員が全員超人キャラならともかく、平均的キャラの中にそういう強力キャラが混ざると他のプレイヤーとしては面白くない。
 SWは盗賊がわりと戦闘で強いため、『素早い盗賊が敵を片付けてしまい、最後まで戦士の出番がなかった』という事が起こり得るのだ(←実話)。
 ちなみに『器用度と筋力が24!おまけに両手利き』がその盗賊だった。二刀流なんてやってたっけな、そーいや。

 …今となっては良き想い出である(遠い目)。


 閑話休題。
 出来上がったキャラは以下の通りである(詳しい設定を見るなら名前をクリック)。
キャラクター名 種族・性別・年齢 技能
ゲイル・グラード 人間、男、17歳 シーフ2/バード1
一般:ヒーラー3
シャディール・リグト ハーフエルフ、男、29歳 ソーサラー1/シャーマン1/セージ1
チェルシー・ノア 人間、女、20歳 プリースト(マイリー)1/ファイター1/セージ1
一般:ハウスキーパー3
フィー 人間、女、16歳 シャーマン1/ファイター1/レンジャー1
ルシアーナ・ファルサラス 人間、女、23歳 ファイター2/レンジャー1
一般:ウェイトレス3

 この中でゲイルはプレイヤーが詳しい設定を作ってきてくれた。
 家族や過去の経歴とかをこうして作ってくれると、こちらとしてもネタにし易いので助かる。
 これが手前勝手な設定だったら(実はこのキャラは某国の王子で…とか、古代の大魔術師の転生で…など)速攻で却下する所だが、幸いこのプレイヤーはそこら辺を判ってくれてるのでありがたい。
 …しかしすまん。今日は君の作ってくれた設定、ほとんど出てこないわ(笑)。

 今回メインのネタとして使うのはシャディール。この青年はハーフ・エルフなのだが…肌が黒い(爆笑)。
 普段は布で耳を隠しているため単なる色黒の人間で通せるが、もしも尖った耳を見られればダークエルフ扱いは必至である。
 もちろん使わせてもらうよ、くくくッ…(含笑)。



【導入 〜新王国歴522年、7月17日〜

 第1話は彼ら五人の出逢いを演出するため、少し導入シーンに凝ってみましょう。(*ここから読者向けに敬語)
 普通なら「酒場で出会った君たちはそこで簡単な仕事を引き受けた。それは…」てな感じでも充分ですが、せっかくの大長編(予定の)キャンペーンだから皆の印象に残るお話にしたいのです。
 実際にどうしたかというと…。


(導入その1)
 シャディールは街道を歩いていた。師匠に頼まれて、とある山中の館に住む賢者グラナートに届け物をするためだ。
 途中の村で自分の黒い肌を珍しがられたが、まあいつもの事だ。
 と、前方から小さい女の子が人型の生き物に追われ逃げてくるのが見えた――ゴブリンだ!
「《眠りの雲(スリープ・クラウド)》!」
 幸い女の子は怪我一つなく救ける事が出来た。ただ、気がかりなのは…
「ありがとう、エルフのおじちゃんv」
 …いや、『おじちゃん』呼ばわりされた事はどうでも良いのだが(←少し傷ついた)、エルフ特有の尖った耳を見られてしまったのだ。
 まあ、田舎の小さい女の子でダークエルフなど知らなかったから厄介な事にならずに済んだ。
 あとはさっさと使いを終わらせて学院に戻ろう……。

(導入その2)
 女戦士ルシアーナは途方にくれていた。職を探して大都市オランに来た所、泊まった宿屋が炎上して無一文になってしまったのだ。
 残された財産は槍と革鎧のみ。手近にあった冒険者の店『遥かな歌声亭』の世話になる事にした彼女は、そこで知り合った戦神マイリーの侍祭チェルシー、蛮族の呪い師フィーの二人と共にゴブリン退治の依頼を受け、エスト村へと向かったのだが…。

(導入その3)
 盗賊ゲイルは同業で悪友のカイトと連れ立ってエスト村に来ていた…『仕事』のために。
 元はといえばカイトが『宝物を貯めこんでいる悪の魔術師』の話を持ってきたからだが、ここに来て更に不穏な噂を耳にする。
 内容は『山中の魔術師の館を黒い肌のエルフが訪れた』…というものである。
「それはダークエルフに違いありませんわ!」
 ゴブリン退治に来ていた三人娘の話と考え合わせるに、『邪悪な魔術師とダークエルフが手を組み、良からぬ陰謀を企てている。ゴブリンはその手下』という推論をした彼らは、急遽彼女らと手を組んで魔術師の館へと向かったのだった…。


 ……もうお解りですね(邪笑)?
 そう、全てはシャディールvs他全員という図式(但し、シャディール本人は知らない)を作り上げるためだったりします(爆笑)。

ルシアーナ:邪悪なダークエルフは絶対に斃さないとね…ふふふ(邪)。
チェルシー:ええ、そうですねッお姉さま(笑)!
ゲイル:腕が鳴るな…(エストックを磨いている)。
フィー:…………(ニヤリ、と怪しい笑みを浮かべる)。
シャディール:……
はぁッ!!俺様ピィンチ(汗)!?

 …楽しそうだね、君たち。
 ちなみに、彼ら(プレイヤー)はもちろん事情を知ってますよ(笑)?
 相変わらずパーティアタック(仲間いぢめ)が好きな連中だ。生き生きしてるぞ、表情が。
 特にいつもヤられてる立場のゲイル(のプレイヤー)君、やけに張り切ってるように見えるのはボクの気のせい(笑)?



【展開 〜小鬼の棲む森で〜

 …さて、GMも鬼ではありません(笑)。何よりこのまま彼らが出会って本気で殺し合ったんではストーリーが台無しです(←本音)。
 ここは共通の敵を出してやって彼らの誤解を解かせてから、ついでに伏線も張りつつパーティ結成!一気にボス戦へなだれ込む予定なのですが、果たしてどうなりますやら・・・。

GM:さて、シャディール君。君は無事に使いを終えて山中を帰路についた。で、早速だけど目の前の茂みからゴブリンが3匹現れたから(爽)。
シャディール:そんないきなりッ!?

 肉弾戦はからきしのシャディール、慌てて逃げ出しました。
 『魔法を使えば良いんじゃ?』と思ったそこのあなた、残念ながらまだまだ門弟レベルの彼はさほど強力な呪文を使えません。
 おまけに元々の精神力が高い方ではないので、《眠りの雲》だと一日2回までしか唱えられないのです。
 既に一度呪文を使っている彼は、精神力を温存するためにも逃走する事を選んだようです。

GM:まあ、敏捷度高いし夜目も利く君ならそうそう捕まらんだろう…逃げ切れもせんだろうが(笑)。さて、逃げ続ける彼はひとまず放っといて(←酷)館を目指す4人+1人(カイト)に場面を移そうか。
他のプレイヤー:ういーっす。

 GMの思惑としては、ここでゴブリンの別働隊と遭遇、敵の戦術(詳しくは後述)で危機に陥った所にシャディールが現れて呪文で助ける…という展開を考えています。シャディールは基本的に善人(笑)なので、襲われている人を見ればとりあえず救けるだろうという読みがあります。
 彼をダークエルフと勘違い(?)している4人にしても、助けてくれた相手をいきなり殺しはしないでしょう。
 この辺は長い間一緒に遊んでいるからできる事ですね。コンベンションじゃこうはいきません、怖くて(笑)。

 
GM:村を出て魔術師の館を目指す君たちは古い山道を歩いている。レンジャー技能+知力ボーナスで判定してくれる?…成功。じゃ、不意討ちはなしね。前方の茂みがガサリと音をたて、中から4匹のゴブリンが奇声をあげて飛び出した!

 新米冒険者とはいえ、ここにいるメンバーは全員武器を扱えるため2レベルのゴブリンごとき大した脅威ではありません…本来なら。
 しかし、GMはここで罠を用意していました。冒険者たちは気づいていませんが、実は茂みの中にもう一体敵がいたのです。

GM:君たちがゴブリンと接敵する寸前、不気味な唸り声と共に辺りは闇に包まれた。精霊使いのフィーには判るが、《闇の精霊(シェイド)》の魔法だ。夜目が利かない君たちには、もれなく攻撃と防御に-4のペナルティをプレゼントしよう(笑)。
一同:…どえェェッ(悲鳴)!?

 はい、大ピンチ(笑)。今の彼らにこのペナルティはシャレになりません。
 ちなみにフィーがまだ《光の精霊》を呼べない事もGMは計算済みです(←悪魔)。
 しかし、予想外だったのは…

ゲイル:…あ、GM。俺、こっそり逃げてカイトと一緒に館へ向かうから。
三人娘
なんですってェェッ!?

 これは大変なコトに(笑)。ルシアーナと同等に腕の立つ主戦力の一人、ゲイルが戦線離脱を宣言いたしました(爆笑)。
 盗賊としては正しいプレイかもしれませんが、残された女性陣はたまりません。いきなり防戦一方に追い込まれます。

ルシアーナ:ぎゃあ、やっぱりソフトレザーじゃ防御が薄いッ!?
GM:所持金でピンゾロ振ったのは痛かったねえ(笑)。あ、お互い見えないから回復魔法はかけられないぞ、チェルシー。
チェルシー:そんな殺生なッ!!
フィー:フィーは一応見えてるけど…1レベルの精霊魔法ってロクなの無いよー(泣)。

 ゴブリンたちは暗闇でも目が見えるので、面白いように(←オイ)攻撃が当たる当たる。
 主戦力のルシアーナは、今回貧乏で革鎧しか買えなかったために(笑)ガシガシ体力を削られていきます。
 チェルシーもフィーもこの状況をひっくり返すほどの力はありません。
 …ま、そうなるように仕向けたんですけどね(笑)。ほどよく恐怖を味わってもらった所で救世主の登場です。

GM:さてシャディール君、君は逃げ回っているうちにゴブリンと人間の女性たちが戦っている所に出くわした。闇の魔法がかかっているせいか人間側はかなり苦戦してるけど、どうする?
シャディール:《眠りの雲》だとみんな範囲に入るんだよね(笑)?じゃあ《光(ライト)》!

 はい、妥当な選択です。明るくなってしまえば実力で勝る冒険者にゴブリンはかないません。あっという間にやられてしまいました。
 しかし、最初に呪文を唱えた残り一体は、シャディールが来る前に逃げていたりします。

ルシアーナ:助けてもらって感謝してるけど…ダークエルフなんだよね、見た目は?(笑)
シャディール:だーかーらー、違いますってばッ!
チェルシー:怪しいよね(笑)。
フィー:後ろ手に武器を構える(笑)。

 恩人に疑いの目を向けつつも(笑)、合流した4人は再度魔術師の館へ向かいます。
 一方、抜け駆けしたゲイルたちは…。

ゲイル:あ、鍵開け失敗した。

 みんなが来るまで待ったのでした(笑)。
 さて、この後魔術師の館で少しゴタゴタがあったのですが、実はGMのフェイントでグラナート氏は単なる変わり者の錬金術師でした。
 なのでその辺はすっ飛ばして場面をゴブリンの巣穴へ移しましょう(笑)。



【対決 〜冒険者、絶体絶命!?〜

 巣穴の構造自体はごく単純な物でした。途中の見張りやいくつかの罠も上手く掻い潜り、彼らは遂にボスの部屋へと辿り着きます。
 ここにいる敵はゴブリンが4匹とホブゴブリンが1匹、そして3レベルの精霊魔法を操るゴブリンシャーマン。かなりの強敵です。
 特にゴブリンシャーマンは人間並みの知性を持っているので、先の戦いでは少し凝った戦法を使わせています。
 《闇の精霊》を召喚すれば人間たちに対して有利になる事を知っている彼は、今回も同じ手を使おうとします。
 もっとも、今回はシャディールが最初からいるため通用しない…というか、最初の戦い自体が攻略法をプレイヤーに悟らせるための伏線でもあったんですけどね(笑)。

 そんな訳で、GMは結構のんきに構えていました。ところが…。

シャディール:行動順最初ですか?じゃあ《眠りの雲》!
GM:へ…?

 今の彼らにとって3レベルの精霊魔法は脅威です。そのためさっさと無力化しようとしたのでしょう。
 ゴブリンシャーマンが眠る確率は50パーセント強といった所だったのですが…。

シャディール:ああッ、出目が低いッ!?
一同:おいおいッ!
GM:じゃ、じゃあこっちは予定通り《闇の精霊》を召喚するよ。

 たちまち辺りは真っ暗闇に。乱戦になった所で、さらにとんでもない事態が発覚します。

シャディール:今ので精神力使い果たしましたー(笑)。
チェルシー:じゃあ今《精神力譲与(トランスファー・メンタルパワー)》するから、それで…。
GM:ちょい待ち、その呪文は相手に接触しないと使えないぞ。真っ暗闇で、しかも敵が攻撃してるのにそんな余裕があるとでも?

 何と今回の切り札、《光》の呪文が使用不能に!これはGMにとっても予想外の事態でした。
 ただでさえこの戦闘はスリルのある戦いにするべく、最初よりも敵を強く設定しています。これにハンデが加わると…。

ルシアーナ:ああッ、やられたッ!?生死判定は…成功(ほっ)。
チェルシー:見えないんじゃ回復魔法も使えないよー(焦)。
シャディール:回避専念!ひたすら逃げ回ります。
ゲイル:攻撃が、攻撃が当たらーん!
フィー:松明から《炎の矢(ファイア・ボルト)》!

 ゴブリンたちの集中攻撃に、鎧の薄いルシアーナが倒されてしまいました。回避力の高いゲイルと金属鎧を着ているチェルシー、逃げ回っているシャディールは何とか持ち堪えていますが、フィーは呪文を使った後、無謀にも武器を抜いてホブゴブリンと闘い始めました。

フィー:げ、今ので生命力ゼロ!?(ころころ)…あーッ!生死判定でピンゾロ振ったあ!!
一同
おいおいおいッ!?
GM:…………(呆然)。

 あーあ、死んじゃったよ(頭を抱える)。回避専念しておけばまだ生き延びるチャンスあったのに…。
 と、思ったのですが後でフィーのプレイヤーに訊いた所、
「そのルールを忘れていた」そうです。
 いったい何年このゲームやってんだよ、キミは…(溜め息)。


 可哀想ですが、ここまでプレイヤーのミスが明らかだともはやフォローする気にもなれず、GMは『全滅もやむなし』の覚悟でゲームを進めます。
 いや実際、全滅パターンでした、このままいくと。

シャディール:ぜいぜい、や、やっと来れた。チェルシー、精神力ちょうだい。

 シャディールがようやくゴブリンを振り切りチェルシーの傍に来ました。彼女から精神力を分けてもらい、《光》の呪文を唱えます。
 それに続いてチェルシーが《治癒(キュアー・ウーンズ)》の呪文でルシアーナを癒し、戦線に復帰させました。
 こうして彼らは何とか危機を脱しましたが、その代償は大きい物でした…。



【終局 〜そして、日常へ〜

 やっとの思いで勝利を収めた冒険者たちですが、フィーが犠牲になってしまいました。
 オランまでは何日もかかる上に所持金も乏しいため、蘇生は諦めて村に埋葬してもらう事にします。

 しかし、GMとしては微妙ですね。この結果を『死者がでて残念』と見るか『全滅を回避できて幸い』と見るべきか。
 誘導ミスしたつもりはなかったんですが、何が悪かったものやら…(苦笑)。

 ともあれゴブリン退治の報酬を生き残った4人で分けた後、いったん彼らは別れました。
 シャディールは賢者の学院へ、ゲイルは宝を手に入れ損ね不貞腐れるカイトを宥めながら、『夕闇亭』へ。
 チェルシーはマイリー神殿で修行に戻り、ルシアーナは『遥かな歌声亭』でウェイトレスのバイトを始める事にしました。
 それぞれの日常が始まるのです…次の事件が起こるまで。


 と、いうわけで第1話はここでお終いです。
 経験値は目的達成分の1000点にモンスターを斃した分を加えて1048点となりました。
 レベルアップについては次の第2話冒頭で書く予定です。

 ここまで読んで下さった方、お付き合い頂きありがとうございました。m(__)m
 それではまた…。

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