第2話

君に贈る挽歌

【前奏 〜反省を踏まえて〜

(GMの独り言)
 前回のセッションから一週間経ちました。
 GMの目算では前回のラストでパーティ結成!…のはずだったんですけどね(苦笑)。
 PCの最初の目的がそれぞれ違っていたのと、フィーがいきなり死んでしまったため上手くいきませんでした。

 さらに、ゲイルのプレイヤーから「次はシティ・アドベンチャーがやりたい」というリクエストを貰っています。
 どうやら前回のシナリオであまり盗賊らしい行動が出来なかったのが不満だったようです。
 どのみち今の状態では古代遺跡の探検は手に余ることですし、新しい仲間を加える意味でも彼の要望を受け入れる事にしました。
 そんな訳で、今回はパーティ結成編第二弾です。

 肝心のシナリオは某コミックを読んで気に入ったお話をベースに、ファンタジー風のアレンジを加えた物だったりします。
 淡い悲恋っぽく攻めてみたいのですが、どうなりますやら。

 前回の冒険から成長した彼らのデータは以下の通りです。(詳しい設定を見るなら名前をクリック)。
キャラクター名 種族・性別・年齢 技能
ゲイル・グラード 人間、男、17歳 シーフ2/バード1/セージ1/レンジャー1
一般:ヒーラー3
シャディール・リグト ハーフエルフ、男、29歳 ソーサラー1/シャーマン1/セージ1
チェルシー・ノア 人間、女、20歳 プリースト(マイリー)2/ファイター1/セージ1
一般:ハウスキーパー3
ティノ・アッサム 人間、男、18歳 シャーマン2/レンジャー1
一般:フィッシャー3
ルシアーナ・ファルサラス 人間、女、23歳 ファイター2/レンジャー1
一般:ウェイトレス3
 技能を成長させたのはゲイルとチェルシーの二人です。
 ゲイルはセージとレンジャーを習得して、野外活動や知識面など様々な状況に対応できるようにしました。
 チェルシーはプリースト技能を上げてより高度な呪文を扱えるようになり、また《治癒》の呪文を5⇒3点の精神力で唱えられるようになっています。本人はファイター技能も上げたかったようですが、経験値が足りないので今回は見あわせました。

 ちなみにフィーのプレイヤーにはキャラクターを作り直してもらいました。
 今回からはティノ・アッサムとしてキャンペーンに参加してもらいます。性格に少し(?)難ありな漁師の息子ですが、どういう活躍を見せてくれるのか、GMとしては期待と不安が半々だったり(笑)。


【導入 〜新王国歴522年、7月28日〜

(その1 〜とある宿屋にて〜)

 「妹を、捜して下さいッ!」「はあ…」
 依頼人を前に、ティノは自信なさげに頷いた。冒険者になると決めてさっそく仕事を引き受けたものの、人捜しなどやった事がない。
 仲間がいれば良いのだが…報酬はたったの200ガメル。人数が増えたりしたら、これを更に分けなくてはならない。
 …危険が少なそうな仕事を回してもらったから贅沢は言えないのだが。
 見も知らぬ少女を捜して街を歩き回る自分を想像し、ティノは軽く溜息をついた。


(その2 〜『遥かな歌声亭』にて〜)

 「――まさか、嫌とは言わないでしょうね?」 ルシアーナが据わりまくった瞳で言った。
 「協力するのよ…ターゲットはこれよ」 チェルシーが少女の似顔絵を見せる…その眼光は聖職者というより犯罪者のようだ。
 …………。
 「この女の子を、捕まえるんですか?でも“生死を問わず”5000ガメルって…」 シャディールはおずおずと疑問を口にしかけ…だが。
 「「もちろん、手伝ってくれるわよね(←断定)」」 殺気すら孕んだ二人の視線が、彼の言葉を喉の奥に封じ込めた。
 ――――シャディールには、既に選択の余地はなかった…。


(その3 〜『常闇通り』にて〜)
 ――その少女は、突然空から降ってきた。
 どういう訳か夜着姿で屋根の上をフラフラ歩いていたその少女、足を滑らせ落ちてきたのを救けたゲイルは真剣に困惑していた。
 見れば上等な布地の夜着に高価そうな髪飾り、素性は知れないが良い家の娘なのだろう。
 加えてここはオランで最も治安の悪い場所――『常闇通り』。
 放って置いたらかなり後味の悪い事になると判断した彼は、仕方なく自分が下宿している『夕闇亭』へと連れて行くのだった。


 …てな訳で。今回は
『ゲイルVS他全員』というコンセプトだったりして(笑)。

 つくづく好きだなあ、私も(←こういう事をするからパーティが成立しない)。



【展開 〜少女と祭りと追っ手たち〜

 ゲイルが女の子を抱えて『夕闇亭』に帰ると、部屋にはカイトが待っていました。

カイト:へっへっへ…ゲイル〜、ちょっと“美味しい話”があるんだけどさぁ〜♪
ゲイル:(胡散臭そうに)……言ってみろ。

 カイトの話は『とある少女を捜して捕まえれば“生死に関わらず”5000ガメルの賞金が貰える』というもの。
 ルシアーナたちが聞いたのと同じ内容ですね。どうやらこの依頼、あちこちの『冒険者の店』に出されているようです。
 更にカイトは少しでも確実に捜せるように、新米冒険者を一人「妹を捜している」と騙してたった200ガメルで雇っていました。

ティノ:…って、もしかしてそれ、俺の事?

 
そうだよん♪(←鬼)

ゲイル:“生死に関わらず”…ね(不機嫌そう)。

 渡された手配書の似顔絵を見ると…雰囲気は少し違うものの、さっきゲイルが拾った少女にそっくりでした。
 カイトもそれに気づいて『棚からぼた餅』的幸運に色めきたちます。

カイト:ゲ・イ・ル・く〜ん…(ゲイルの手を握って)俺たちって、親友だよな、な?
ゲイル:(爽やかに笑って)…悪い、諦めろ

 普通の盗賊であればここでこの少女を売ってもおかしくない所ですが、ゲイルはそれを選びませんでした。
 自分自身も理不尽に追われ続けた過去のせいか、こうした状況では金より情を取る性格なんですね。
 “生死に関わらず”などという条件がついていた事も、彼の反骨精神を刺激したようです。
 たっぷりと脅しをかけて(笑)「他言無用」を約束させられたカイトは、滂沱の涙を流しつつ自棄酒を飲みに行くのでした。

 …プレイヤーとの付き合いが長いと、こういう誘導も効果的です。はい、GMは多分こうなるだろうと狙ってました(笑)。


 しばらく経って目覚めた少女は、自分を“グロリア”と名乗りました。
 最初はゲイルを警戒していた彼女ですが、どうやら害意はないらしいと判ると「祭りに連れて行って欲しい」と頼みます。

ゲイル:お前な…今、自分がどういう状況か、解ってるか?
グロリア:そんなの知らないわよ(きっぱり)。良いじゃない、ちょっとくらい…お金が要るなら払うから、ねっ、ねっ?
 
 終いには涙目で「お願い」され、ゲイルは渋々オランの夏祭りに彼女を案内する事になりました。
 さて一方、『人探しをするなら盗賊もいた方が便利』と考えたルシアーナたち三人は、先日知り合った盗賊ゲイルに会うべく『夕闇亭』を訪れます(一応前回のラストで、互いの泊まっている宿の名前と大まかな場所は教え合った事になっています)。

夕闇亭の主人:…ん?ああ、ゲイルなら先刻、可愛らしいお嬢さんを連れて出かけていったぞ。

 特に口止めもされなかった主人、あっさり話してしまいました(笑)。
 興味津々で訊くとその少女が似顔絵の人物に似ているらしいと判り、女性二人が目の色を変えます。

ルシアーナ
抜け駆け?そうはさせなくってよ、ふふふ…(握り拳)。
チェルシー:これもマイリー神のお導きですね、お姉さま(邪笑)。
シャディール:……ゲイル、ぴーんち(笑)。

 そんな事とは露ほども知らないゲイル、グロリアに振り回されつつも祭りのイベントをしっかり楽しんでいました。

グロリア:……あ(出店の前で立ち止まる)。
ゲイル:どうした?

 視線を辿ると、グロリアが見ていたのは朝顔の花をかたどった焼物のブローチ。
 安物ですが、「一番好きな花なの」と呟く彼女を見て、ゲイルはそれをプレゼントしました。

GM:さてさて、その頃他の人たちも祭りの中にいるわけだけど…手分けするならそれぞれダイスを振ってくれたまえ。ゲイルと同じダイス目が出たら『偶然にもばったり出くわした』事にするから。
全員:ほ〜い(ダイスころころ)。

 一定時間が過ぎるごとに一回ずつ振って貰いましたが、一度ニアミスが出た以外は擦れ違いばかりでさっぱり会えませんでした。
 あっという間に一日が終わり、ゲイルとグロリアは日の落ちた川べりを二人きりで歩いています。
 …いや、実はカイトに依頼をキャンセルされたティノが同じ川べりで釣りをしてたりするんですが(笑)気づいちゃいません、二人とも。

グロリア:…ねえ、踊らない?
ゲイル:…………下手だぞ。

 月明かりの下、ワルツを踊る二人――――このシーン、一度やってみたかったんです。ああ、嬉し恥ずかしい(笑)。
 しかし、いつまでも甘いシーンばかり演出してる訳にもいきません。本筋に入るべく用意しておいた遭遇を起こします。

柄の悪い冒険者たち:いたぞ、こっちだ!!

 そう、何もグロリアを追っているのはルシアーナたちだけではなかったのです。
 5000ガメルに目の眩んだならず者たちが、いきなり武器を構えて襲い掛かってきました。
 一対一なら負けはしないとはいえ、さすがに多勢に無勢と判断したゲイルは彼女を連れて逃げ出します…が、敵は数が多くすぐに取り囲まれてしまいました。そこに――――

シャディール:《眠りの雲(スリープ・クラウド)》!

 ようやく追いついた他の三人&ティノが合流し、ならず者たちはあっさり追い払われました(笑)。
 さて、助けられたとはいえルシアーナたちも賞金目当てには違いなく、彼女の処遇を巡って睨み合いに。
 しかし、その時。

グロリア:……そんなに…そんなに、あたしを殺したいのッ!?

 突然グロリアの様子がおかしくなります。そして、周囲の石畳が見えない力で引き剥がされ――

GM:宙に浮き上がった石畳は凄い勢いで周囲を飛び回り始めた。そしてその数枚は…グロリアに向かって飛んで行く!
ゲイル:!?庇うッ!!
ティノ:不死者の霊氣(オーラ)を感じる…あの娘から?
シャディール:アンデッド!?もしかしてこれ、騒霊現象(ポルターガイスト)?

 彼女を気絶させると、この怪現象はすぐに収まりました。
 ひとまず『夕闇亭』に戻って相談を始めた五人、ここに至ってようやく『グロリアを捜しているのは何者なのか?その理由は?』という事に考えを向けます(遅いって)。

 時折発作を起こしては自殺を図ろうとするグロリアのために数人の見張りを残し、情報収集に行く彼ら。
 盗賊ギルドに大枚500ガメルを支払ったゲイルは以下の情報を手に入れました。

GM:最初にこの件を依頼した人物は、どうやらクローデル侯爵家の使用人らしい。で、ちょうど昨夜から侯爵家の一人娘“セシリア”が失踪しているらしいんだな。
ゲイル:あいつ(グロリア)は…その、セシリアって娘なのか?
GM:…さあ?何でも数年前に病を患って以来、一度も館の外に出てないって話だけど…どうやら幽閉されてた節もあるねえ。
ゲイル:…………。


 帰ってきたゲイルから話を聞いた冒険者たち、さっそくクローデル家に行って事実を確かめる事にしました。



【対決 〜クローデル家の真実〜

 ――――とはいえ、無名の冒険者ごときが突然貴族の館に行った所で相手にされる筈もなく。

使用人:御主人様は「そのような者は知らぬ。帰ってもらえ」との仰せです。
ゲイル:(ひそひそ)こうなったら…こっそり忍び込むぞ。
ティノ:そ、それって犯罪ですか(笑)?

 一旦帰ったと見せかけて裏口に回る冒険者たち。
 広い割に人が少ない=見つかりにくいと判断した彼らは、グロリアを連れて大胆にも真昼間から屋敷に潜入しました。

GM:鍵明けは成功、目撃者も今の所はなし。無事、屋敷内に入れたよ(見張りとかも少ないんだよね…プレイ時間も押してる事だし、さっさと奥の部屋まで行って貰いましょうか)。

 ぞろぞろと全員で動いたのでは幾らなんでもすぐに見つかってしまうので、シーフ技能を持つゲイルが屋敷内を探索します。
 残りのメンバーは近くの空き部屋に潜んでゲイルの帰りを待つ事に。今回、本当にゲイルが主役だわ(笑)。
 さて、奥にあった寝室でゲイルが出会ったのは…。

やつれた女性:――貴方は、誰?……ねえ、私の娘を知らないかしら?セシリアというのだけど…。
ゲイル:…この人が、あいつ(グロリア)の母さんなのか?

 クローデル侯爵夫人ことアイダさんです。しかし彼女はグロリアという名前には全く心当たりがないようです。
 どうやら彼女自身、何らかの病に伏せっている様子…話しているうちに興奮してきたのか、だんだん様子がおかしくなってきました。

アイダ:(突然ヒステリックに)あの子を…あの子を返して!あの忌まわしい悪魔が!娘から出て行って頂戴!!
ゲイル:まずいな…人が来ちまう。一旦部屋から出て、みんなの所に戻るぞ。
アイダ:お願い…あの子を返して。殺して…地下にいるあの悪魔を……。

 その頃、他の人たちはといえば。

グロリア:放して!みんな嫌いッ!私なんて生まれない方が良かったのよ!!
ルシアーナ:ちょ、静かにして…こら、暴れるんじゃないッ!?
チェルシー:なんでいきなり…ああ、どうしましょう?(←《鎮静(サニティ)》の呪文を忘れている)

 騒霊現象まで伴って暴れ出したグロリアを抑える事が出来ずに、慌てて部屋を飛び出した一行は屋敷の人間に見つかってしまいました。
 逃げ回っている所をゲイルと合流し、地下に何かあるらしいと考えた彼らは下りの階段を捜します。
 その間にもグロリアの起こした騒霊現象で、窓が破れたりシャンデリアが落ちてきたりと屋敷の中はぐちゃぐちゃですが(笑)。


グロリア:お願い…“私”を見ないで……。
ゲイル:これが…本当のお前なのか?

 隠された地下室――そこにいたのは衰弱した一人の少女。
 しかしその姿は…醜く変形した顔と骨格、一つしかない目玉、癒着した指先…まるで化け物のようでした。

 セシリアの双子の姉だった彼女は奇形児として生まれ、その容姿ゆえに幽閉されて育ったのです。
 今まで殺されずに済んだのは彼女とセシリアに不思議な力があったため――互いの感覚や怪我をも共有する力が。
 しかしある時狂気に堕ちた母親に殺されかけた事がきっかけで、グロリアはついに妹の身体を乗っ取ってしまったのでした。

グロリア:あの子(セシリア)だけ幸せになるなんて許せない…そう思ってた。でも…もう、いいの。
ゲイル:…………。
グロリア:あの子だけが、あたしに優しかった…。「どんな時でも、私はお姉ちゃんの味方だから」…そう言ってくれたの。
シャディール:生命の精霊力が殆ど感じられない…。ゲイル、彼女はもう…。
ゲイル:…判ってる。
グロリア:あたしね…本当は名前がなかったの。あの子がくれたの。“朝顔(モーニング・グローリー)”…「大好きな花の名前を一番好きなお姉ちゃんにあげる」って。ふふっ、あたしもこの名前、好きよ…。
ゲイル:そうだな、いい名前だ…俺も、好きだよ。
グロリア:お祭り、本当に楽しかった。もう一度、もう一度だけ踊りたかったな…。
ゲイル:(笑って)一回きりじゃ足りないだろ…どうせなら今度は歌もサービスしてやろうか?
グロリア:………………。
ゲイル:グロリア?……おい――――。



【終局 〜君に贈る挽歌〜

 ――――翌日、マーファ神殿にて。
 グロリアの遺体は身元不明としてここで埋葬される事になりました。
 侯爵からは他言無用を条件に多額の賞金が支払われました――実はゲイルたちの要望で葬儀の金もその中から出しています。
 なお、これは後日談になりますが、セシリアはグロリアの死後、無事に意識を回復し15歳で社交界デビューを果たしました。
 幸か不幸か、グロリアだった頃の記憶は殆ど残ってはいないようです…もちろん、今回の件についても。

ゲイル:鎮魂歌になっちまったけど…ちゃんと聴こえてるか……?

 静かな墓地…仲間たちが見守る中、ゲイルの歌声だけがいつまでも響いているのでした――――。



 と、いうわけで第2話はここでお終いです。
 今回はみんなロールプレイがとても良くて、GM冥利につきました(^^)。
 反省点としては、中盤で情報収集に手間取りすぎて時間がやたらとかかってしまった事でしょうか。
 この辺は事前の準備で解決できる所だったので、もっと精進しなくては…シティ・アドベンチャーって難しいです、ホント。

 経験値は目的達成分の1000点に見張りたちを倒した分を加えて1032点となりました。
 レベルアップについては次の第3話冒頭で書く予定です。

 ここまで読んで下さった方、お付き合い頂きありがとうございました。m(__)m
 それではまた…。

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