第4話

怪盗がいっぱい

【前奏 〜今回は(も)コメディだ!〜

(GMの独り言)
 
…「近いうちに」と言いながら〜♪(←歌うな)三ヶ月半ぶりのご無沙汰でしたゴメンナサイ。m(__)m
 さて、前回から参加したネフィスくんですが、大方の予想通り彼も真っ当に仲間にはなりませんでした(笑)。
 うーむ、彼らがちゃんとパーティ結成できるのはいつの事やら。そもそも結成する気があるのだろうか、彼ら?

 まあ、今の関係も結構GMは気に入ってたりするんで、無理に仲間らしくさせるつもりもないんですけどね(^_^;)。
 それはそれとして実際のセッションは前回から一ヵ月後――――しかし、またもやプレイヤーの都合でチェルシーは不参加だったり。
 別のゲームをやろうかな?とも思いましたが、一回きりのシナリオのために新キャラ作ってもらうのは面倒だし、希望者も多かったのでキャンペーンの続きをやる事にしました。
 みんな社会人だから、予定を合わせるのはいつも大変です…今更だけど。

 ちなみに戦闘バランスはちょいと厳しく設定してます(都市内だから、もし死んだりしてもフォローできるしね)。

 前回の冒険から成長した彼らのデータは以下の通りです。(詳しい設定を見るなら名前をクリック)。
キャラクター名 種族・性別・年齢 技能
ゲイル・グラード 人間、男、17歳 シーフ3/バード1/セージ1/レンジャー1
一般:ヒーラー3
シャディール・リグト ハーフエルフ、男、29歳 ソーサラー2/シャーマン1/セージ1
チェルシー・ノア 人間、女、20歳 プリースト(マイリー)3/ファイター1/セージ1
一般:ハウスキーパー3
ティノ・アッサム 人間、男、18歳 シャーマン2/レンジャー1/ファイター1
一般:フィッシャー3
ネフィス・クレール 人間、男、15歳 シーフ3/プリースト(チャ・ザ)1
ルシアーナ・ファルサラス 人間、女、23歳 ファイター3/レンジャー1
一般:ウェイトレス3
 今回、成長したのはシャディール(ソーサラー1⇒2)とゲイル(シーフ2⇒3)。
 特にシャディールの成長は意味が大きいと思われます。今までは二発で打ち止めだった攻撃魔法がなんと四発も撃てるんですから(笑)。
 冗談は置くとしても、これで支援魔法はかなり使い易くなった筈です。3レベルで使い魔が持てるようになるまで頑張ってね♪


【導入 〜新王国歴522年、9月15日〜

(その1 〜ネフィス、自宅にて〜)

「――この女を捜して欲しいんだ。見つけたら、連れて来なくていいから彼女の今のねぐらを突き止めて俺に教えてくれ」
 そう言うと依頼人は一枚の似顔絵を取り出してネフィスに渡した。

 依頼人:ネイス・ミリアス――最近、西方からやって来た元冒険者の傭兵。
 依頼内容:シエラという吟遊詩人の女性を探す。報酬600ガメル。

 久々の(まともな)仕事である。前金300ガメルを受け取りながら、懸命に緩む顔を引き締めるネフィス。
 こちらに客を回してくれた盗賊ギルドの知り合いに感謝しつつ、なんとしてもこの仕事を成功させて知名度を高めたいと願う彼だった。
 …一人で生きていくのも、なかなか大変なのだ。


(その2 〜『遥かな歌声亭』にて〜)

「誰か…誰かあたしに仕事をちょうだい。塩スープなんてもう嫌ッ!」(←ルシアーナ:ウェイトレスのバイト中)
「プレートメイルなんて高い物を買ったからですよ…」(シャディール:食事中)
「へっへー、俺はまだ余裕あるもんね♪そこのおねーさん、メニューもう一つ追加ー」(ティノ:同上)
「…斬って良いかしら、良いわよね?」(包丁を構える)
「おう、止めんから存分に殺れい」(ゲイル:見物モード)
 あわや流血、という場面に割り込んだのは『遥かな歌声亭』の亭主ことフォーディアス
「今しがた依頼が一つ入ったんだがな…お前さんたち、暇だったら受けてみるか?裏はまだ取れてないが…」

 依頼人:ソラリス・グラッフ、オラン在住の古美術商。
 依頼内容:グラッフ邸の警護。期間は最長で一週間、報酬は一人500ガメル。

 『一週間限定』という部分に疑問を感じ訊いてみると、最近オランに出没する怪盗からグラッフ邸に予告状が届いたらしいとの事。
「と、いう事は…そいつを捕まえれば、依頼料+賞金で報酬二重取り!?(キラーン)」
 瞳を欲望、もとい希望に輝かせた赤貧冒険者たちは、さっそくグラッフ邸に向かうのだった。

ゲイル:…ソラリス・グラッフ?何か、どっかで聞いたような気が…。

 ふふふのふ、そりゃあ君は聞き覚えがあるだろうさ。なんたって今回の依頼人は……。


【展開 〜知り合いがいっぱい〜

(〜グラッフ邸にて〜)

 やって来ましたグラッフ邸。商人ソラリスに詳しい話を聞いた所…。
「――実は、届いた予告状というのが…1通ではないのです」
「「「「……は?」」」」

 曰く、
『 5日後の真夜中、《黄昏の女神》を頂きに参ります。――――ミラージュ 』
 曰く、
『 今宵より三度月が天頂に上りし夜、我は麗しの女神を迎えに推参する。――――ブリリアント・ローズ 』
 曰く、
『 女神像は我々が貰い受ける…邪魔をするなら、その命も。――――ファンタズム 』
 曰く、
『 古代王国の秘宝、伝説の女神はわたくしにこそ相応しい。…明晩、参上。――――クリムゾン・レディ 』

 なんとまあ、四通もの予告状が届いていたのでした(笑)。しかも(プレイヤーは)知っている連中ばかり…どうする?

ゲイル:どうする…ってもなあ……(頭を抱える)。
ルシアーナ:とりあえず、あたしたちが護衛する女神像というのを見せて頂けますか?
ソラリス:…いやあ、それが……私にも、どれの事だか分からんのですわ。
一同:……はあ??

 ソラリス曰く、「《黄昏の女神》とやらには心当たりがない…が、予告状が示していそうな品物は3つある」との事。

 1、絵画 《黄昏の乙女》 (黄昏時の風景に立つ女性を描いた絵。美術品的価値はかなり高い)
 2、大地母神マーファの像 (50センチほどの古びたブロンズ像。美術品・骨董品的価値はそこそこ)
 3、船のフィギュア・ヘッド (古代王国製で何らかの魔法がかかっているらしい…が、重量はなんと500kg!)

シャディール:……このうちの…どれか、だと……(呆然)?
ティノ:いやー、あはは。なんか、どれもハズレって感じぃ〜?

 絵画は『女神』でもなければ『像』でもないし、マーファ像は魔力も何も感じられないありきたりな代物。一番価値がありそうな女神型のフィギュア・ヘッドは、個人ではとても運べないようなデカブツだったりします(笑)。

 …でもね、確実にこの内のどれか一つが狙われてるんだよ〜♪

ゲイル:…フィギュア・ヘッドは考えなくてもいいだろ。こんなモン、運びようがない。
GM:とは限らないよ?《軽量化(ディクリース・ウェイト)》の魔法なんてのもあるし、ブリリアント・ローズは大掛かりな仕掛けを使った手口で有名だ。ターゲットを馬車ごと空へ連れ去った、なんて逸話もあるくらいだしね(笑)。
ルシアーナ:…もう、いいわ。全部一ヶ所にまとめて置いて、全員で守ってりゃ問題ないわよ。

 さっそく今夜から泊り込みだ、とそれぞれ武装を確認する一行にソラリスがとある人物を紹介します。

ソラリス:紹介が遅れましたが…こちらは、貴方がたより先に雇った冒険者の方です。護衛は彼と一緒にお願いします。
ネイス:…ネイス・ミリアスだ。よろしく頼む。

 実は彼、以前のキャンペーンでPCだったキャラです。実力や性格はプレイヤーも把握してるんで説明の手間が省けますな(笑)。
 さて、人手が増えた所で警備のローテーションを話し合っていると…。

身なりの良い少女:あの…初めまして。わたし、ソラリスの娘でセレンと申します。お茶を淹れたので、よろしければ…。
ゲイル:…ッ!? (@□@;)!! (←やっと気が付いたらしい)

 彼女を始めゲイルの家族に関する設定は、彼のプレイヤーが作った原型にGMがキャンペーンに沿った変更を加えています。
 心の準備が出来ていなかったゲイル(のプレイヤー)は、セレンの登場にかなり動揺しているようです(笑)。
 ちなみに他のプレイヤーは事情を知らされてないので、何やら誤解しそうな雰囲気…ま、いいか。

GM:(にやにや笑いながら)セレンは何だかゲイルの事をしきりに気にしているようだ。チラチラと物問いたげな瞳を向けてくる。
ティノ:気に入られちゃったのかなぁ〜?あ、俺は気づいてないけど(笑)。
シャディール:セレンさん、もしかしてゲイルさんとお知り合いなんですか?(←悪気はない…多分)
セレン:え、あの……ゲイルさん、ですか?もしかして貴方はジーク兄さ…?
ゲイル:セっセレンさんッ!すまないがトイレまで案内して貰えないかなッ?!

 かくして、みんなの詮索を避けるため強引に場を外すゲイルことジークフリード・ブラッドフォーク(*本名)であった(笑)。

ルシアーナ:くすっ……若いって、良いわね…。(←勘違い)

 
(〜オラン街中にて〜)

 さて一方、人探しを依頼されたネフィスは『吟遊詩人なら広場にいるだろう』と芸人たちが集まりそうな場所を歩いて廻ります。
 結構偶然に頼る部分が大きいと判断したGMは、ダイスを振ってもらいゾロ目が出たら『運良く彼女もその広場に来ていた』事にする、と宣言しました。確率にすると六分の一ですが…。

ネフィス:お〜、いきなりゾロった♪
GM:おや、運がいいねえ。それじゃ冒険者技能+知力ボーナスで判定してみて、目標値は…。

 ネフィスの知力は並以下(11)ですが、不利をものともせずに判定を成功させた彼はあっさりシエラ嬢を発見します。
 これで、彼女の住んでいる場所を確かめてネイスに報告すれば依頼は完了です。
 ……しかし。

ネフィス:あのー、シエラさんですよね?俺、あなたを探すように頼まれた者なんですが…。

 待て。

シエラ:はぁ?あの、頼まれたって…どなたにですか?
ネフィス:はい、ネイスさんという男の人です(あっさりきっぱり)。で、あなたが住んでいる所を教えて欲しいんですが。

 …いや、確かに『相手に依頼人の事を教えるな』とは言わなかったけど…これって常識以前の問題なのでわ……。
 いきなりこんな事を言われて面食らったシエラ嬢としては、素直に教える筈もなく。
 そそくさと立ち去る彼女でしたが…。

シエラ:あの…どこまでついていらっしゃるんですか?
ネフィス:いえいえ、お気になさらず。僕も偶然こっちに用があるんですよ(←大嘘)。

 あのさあ、相手も露骨に嫌がってるんだから…もっとこっそり尾行するとかしようよ(-_-;)。

GM:(…仕方ないな、こりゃ)シエラさんは溜息をつくと、おもむろに竪琴を取り出して歌い始めた。
ネフィス:おー、ぱちぱち。(←解ってない)
GM:(阿呆め)通行人も彼女の歌に足を止めて聴き入っていたけど…急にぞろぞろと帰りだした。精神抵抗してみな?
ネフィス:へ?(ころころ)…12だけど。
GM:はい、抵抗失敗(笑)。

《望郷の歌(ノスタルジィ)》:呪歌
 聞く者の心に強烈な望郷の念を起こさせ、ねぐらへと帰してしまう魔法の歌。
 その効果は歌が聞こえなくなっても、ねぐらへ帰り着くか一時間経つまでは持続する。


GM:と、ゆーわけで。君が正気に戻ると、既にそこは家の中だった(笑)。
ネフィス:ああっ!しまったぁっ!!

 うーん、しかしこれマジにやってるのか?ネフィスって、キャラよりもプレイヤーの方が知力低かったりして…(苦笑)。
 ともかく本日の結果報告のために、ネフィスは依頼人が世話になっているという商人の屋敷へ向かいました。


(〜再びグラッフ邸にて〜)

 ゲイルはセレンに自分たちの関係を口止めすると、仲間のもとへ戻りました。実の兄が盗賊では、セレンにとって何かと問題があると考えたのでしょうか?(仲間にからかわれるのが嫌なだけだったりして…)
 装備類を一通り整えて、準備万端整った夕刻、ネフィスがネイスを訪ねて現れます。

ネフィス:かくかくしかじか…と、こういうわけで逃げられました。
ネイス:…………
馬鹿か、あんたはッ!!報酬が欲しかったら、まともな仕事して来いッ!!!!

 ま、当然の反応ですな(笑)。横で見ている他の仲間たちは、もちろん大笑いしています。
 幸いネフィスはお払い箱にはされず、引き続きシエラを捜す事になりました。
 警備のために残ったメンバーは、予告状の届いた日と文面から怪盗たちについて推理を始めます。

ゲイル:確か、ミラージュ(以後M)の予告状が一番最初で…その翌々日にブリリアント・ローズ(以後BR)とファンタズム(以後F)のが届いたんだな。で、クリムゾン・レディ(以後CL)のが更に翌日で一番最後、と。
シャディール:でも、犯行予告の日付はCLが一番早いですよね。MとBRは重なってるのに。
ルシアーナ:…もしかして、CLって只の便乗犯じゃないの?案外、自分たちが何を盗むのかも判ってないとか(笑)。
一同:……ありうる(笑)。

 あっはっは。あの連中の性格、気持ち良いくらい読まれてますね〜(^_^;)。
 実の所、プレイヤーたちの推理は殆ど正解です(笑)。後は、Fの目的に気づくかどうかがGMとしては気になりますが…。


【対決 〜真紅の貴婦人、再び〜

 翌日、再びシエラを捜すネフィスでしたが、そうそう旨く見つかる訳もなく。
 一日オランを駆けずり回った彼が夕食を摂ろうと《遥かな歌声亭》に寄ったところ…。

ネフィス:…………いたじゃん(@_@)。

 はい、実はシエラさんは数日前からここに泊まっていたのでした(大笑)。
 イベントなんかも用意してたんですけどねー、誰も店に戻ってこなかったし。当然ルシアーナたちも遭っていた筈なので、彼女らに訊いてみれば憶えてたかもしれないんですが。いや〜残念残念(笑)。


 それはさておき、プレイ時間も押しているので第一の決戦に移ってしまいましょう。
 予告状の通りなら、今夜はクリムゾン・レディが現れる筈なのですが…。

ティノ:…あれ、今カランカランって音がしたような?
ゲイル:庭に鳴子を仕掛けておいたんだが…誰か引っかかったみたいだな。

 庭先で数名分の慌てたような声と物音がして、待つ事しばし。

クリムゾン・レディ:ほーっほっほっほ!!予告どおり来てあげたわ!問題の女神像とやら、命が惜しければすぐに引き渡すのねッ!
シャディール:庭で罠に引っかかった後、わざわざ正面玄関に廻って来たんですか…?
ルシアーナ:《問題の女神像》って…やっぱり何を盗むのか判ってないんじゃない…(呆)。

 高笑いする賊を前にひたすら呆れかえる冒険者……当たり前か(笑)。

クリムゾン・レディ:渡す気は無いようね……いきなり《火炎球(ファイア・ボール)》ッ!!
一同:どわあっ、あちちあちっ!!
シャディール:あれは《炎の杖》!使うと価値が下がるのに、勿体無いっ(笑)。
ゲイル:言ってる場合かっ!それッ!!(←ダーツを投げた)

《炎の杖(スタッフ・オブ・ファイア)》:マジック・アイテム
 合言葉を唱えるだけで誰でも炎系の古代語魔法(5レベルまで)を使える杖。魔力は誰が使っても一律5。
 杖に蓄えられた精神力には限度があり、それを使い果たすと単なる杖になってしまう。


 回復役がいない冒険者に対し、クリムゾン・レディ側はマジックアイテムで強化したので結構な強敵…なんだけど。
 相変わらず戦闘になるとダイスの出目がいいよね、アンタたち…。

ゲイル:そーれ、またクリティカルだッ!
GM
:きゃー、回復用の精神力がもう無いー!
ルシアーナ:よぉし、このまま一気に押すわよっ!!

 きゃー、まずいっ。ここでこいつらが殺られると以前のキャンペーンに矛盾が(笑)。
 …仕方ない。ここは一発トンズラさせて頂きますっ。

クリムゾン・レディ:ふっ、なかなかやるわね。今日の所は引き分けにしておいてあげるわっ!
一同:ちょっと待たんかいッ!!

 追い討ちで手痛いダメージを喰らいつつも、《闇(ダークネス)》の呪文で追っ手の目を眩ませ、ほうほうの体で逃げ出しました。
 プレイヤーたちもこちら(GM)の事情をある程度知っているので(笑)深追いはしませんでした。ありがとね(^_^;)。

 さて、残るは他の三組ですが…残念ながら、ここまででプレイ時間がなくなってしまいました。
 GMの見通しが甘かったらしく、3時間では到底終わらないボリュームだったようです。最後の戦闘も時間かかったしね。
 というわけで後編へと続きま〜す。


怪盗がいっぱい(後編)

 第3話に引き続き、またもや前後編かあ…どうも私はシナリオに必要な時間を読み切るのが苦手です(-_-;)。
 単純なつもりのシナリオでも、実際にやってみると必ず予定より延びちゃうんですよねえ…。

 さて、今回は4ヶ月(実時間)ぶりにチェルシーのプレイヤーがゲームに復帰します…って言ってもプレイレポ上じゃピンとこないか。
 ちなみに彼女は余っていた経験値を使ってプリースト技能を3レベルに上げています。
 これでパーティ総合力も上昇♪きっと神殿での精神修養中に神の声でも聞いたのでしょう(笑)。


【展開−2 〜暗躍する人々〜

 さて、後編の構成を考えていてGMは一つ気づいた事があります。それは…、

 ……
ネフィスの出番、前編でみんな終わっちゃったよ(大笑)

 はっはっは、シエラさんとネイスの絡みから怪盗たちの話に繋げるつもりだったんですよね、当初のプロットだと。
 ついやっちゃったけど、前回見つけさせたのは拙かったなあ(^_^;)。このままだとネフィスが後編に出られないわ。
 …う〜ん…………よし(ぽむ)。←何か思いついたらしい


(〜グラッフ邸周辺にて〜)

 翌朝、シエラ発見の報告をしにグラッフ邸を訪れたネフィスは、見知った顔に出くわします。

ネフィス:…あれ、ブルークさん?
ブルーク:やあ、紹介した仕事は上手くいきましたか?

 人捜しの依頼をネフィスに仲介したのは、この人でした。ネフィスにとってはチャ・ザ神殿の先輩で、以前からの顔見知りです。
 ネフィスが家を出て一人で暮らすにあたっても、つてで安い下宿を見つけたり盗賊ギルドに顔繋ぎしてくれたりと、何かと世話をしてくれた恩人でもあります。

ブルーク:私は少し用事がありますので…失礼。
ネフィス:あの人の家って……この辺だったっけ?

 首を傾げつつもネイスに報告を済ませ、報酬を受け取って出てくると…。

GM:君が外に出てくると、視界の隅に見知った後姿が映る。ちょうど通りの向こうにブルークさんが歩き去る所だった。
ネフィス:……怪しい(笑)。後を尾けてみる。
GM:了解、じゃあ敏捷度ボーナス+シーフ技能レベルで判定して。…うん、気づかれてはいないようだ。
ネフィス:さ〜て、何か弱みでも掴めるかな?
GM:……(ニヤリ)。


(〜グラッフ邸内にて〜)

GM:ネフィスが帰ってから少し経った頃、ゲイルを訪ねて人がやってきた。裏口の方にいるそうだ。
ゲイル:客?誰だ…行ってみる。
カイト
ゲ・イ・ル・く〜ん(はぁと)
ゲイル
帰れ。ばたん(←扉を閉めた)。
カイト:なんでだよ〜ぉ。俺たち、相棒だろ〜ぉ?

 
厄介事を持ち込む時だけ相棒になる男、カイト(笑)

ゲイル:(話を聞いている)……で、要するに。ここの財宝ちょろまかして、罪だけ怪盗どもにおっ被せようって訳か。
カイト:そそそそそ。我ながら、な〜んて名案なんだろう♪
ゲイル
帰れ。げしっ。
カイト:なぁ〜んでだよ〜ぉ!?

 そりゃ、実の妹がいる屋敷でそんなこと出来ませんよねえ(笑)。
 無情にも叩き出されたカイトと入れ替わりに、《遥かな歌声亭》で依頼の件を聞いたチェルシーがやって来ました。

チェルシー
ゲ・イ・ルくぅ〜ん♪
ゲイル
帰れお前はァッ!!

 おちょくられるゲイルの怒りはさておき(笑)、これで仲間も全員揃った訳で。後は夜が来るのを待つばかりです。


(〜高級住宅街にて〜)

 さて一方、ネフィスはブルーク氏の後を尾けて、どこかで見たようなお屋敷に来ていました。
 誰の屋敷だったか思い出せないネフィスは、大胆にも忍び込んで確かめる事に…。

GM:屋敷内に入ってみるとだね、一階奥の部屋から男性の話し声が聞こえるよ。
ネフィス:もちろん、近寄って聞き耳立てます♪
GM:はいはい(ダイスころころ)……近寄るとねー、いきなり扉が開いて伸びてきた腕が君を部屋の中へ引きずり込んだ!
ネフィス:ゑっ?!
GM:部屋の中には3人の男がいた。正面にはブルーク、背後では君の知らない男が扉を塞ぐ形で立っている。部屋の奥で車椅子に座っているのは、一ヶ月前に遭った青年――ハウルだ。
ネフィス:こ…これわ、もしかして『飛んで火に入る〜』ってやつ(汗)?
ブルーク:やれやれ、こんな所までついて来るなんて…困った人ですね。
謎の男:チッ、厄介な。…おい、こいつをどうするんだ?
ハウル:見なかった事にして下さい、という訳にもいかないでしょうね…。仕方ありません、事情を話して御協力願いましょうか。

《ハウルたちの事情》
 ――この世界(フォーセリア)には異界へと繋がる無数の“門(ゲート)”がある。
 数百年前に、それら門の一つから異界の神の《力》が入り込み、16に分かれてこちらの世界の物品と融合した。
 強力な《力》を宿したそれらの物品――《神器》は、このまま放置しておくとフォーセリアに重大な危機を引き起こすらしい。

 ハウルは“とある事情”から《神器》を回収するために冒険者を雇い、遺跡などを探させている。
 しかし既に発見された《神器》は、真相を知らない人間によって高価なマジックアイテムとして売り払われ、合法的な入手は不可能。
 それゆえ、ハウルはそういった《神器》を回収するために、非合法活動専門のチームを結成した。
 すなわち――――怪盗《ブリリアント・ローズ》


謎の男:まあ、スカ(はずれ)を引く事も多いんだがな。そういう場合は後で正当な持ち主に返す事にしている。
ネフィス:でもぉ…俺、いちおう仮にもチャ・ザの神官なんですけどぉ…?
ブルーク:私もチャ・ザの神官ですよ。人々に降りかかる災いを未然に防ぐためです、我らの神も御目こぼし下さいますよ。
ネフィス:もし…もしも断ったら、俺をどうするんです?あ、あくまで『もしも』ですけど。
ハウル:……どうすると思います(微笑)?
ネフィス:…………協力させてください…(T_T)。

 
教訓:過ぎた好奇心は身を滅ぼします。←ハメておいて言う事か(笑)。

ハウル:じゃあ、あなたには《姿を盗むもの(ダブル・ミラー)》を貸しておきます。それと、私たちは人殺しをする気はありませんので、襲われたら逃げ回ってください。捕まりそうになっても反撃は最低限にとどめるように。

《姿写しの鏡(ディスガイズ・ミラー)》:マジック・アイテム
 首にかける鎖がついた、コンパクト型の手鏡。合言葉を唱えると、その時鏡に映していた対象そっくりに変身する。
 この変身は幻覚に過ぎないため、小鳥などに変身しても空は飛べないし、狭い穴を潜る事も出来ない。
 変身を解く時には、自分の姿を鏡に映して合言葉を唱えれば良い(《呪文解除(ディスペル・マジック)》でも可)。


 かくして、ここに『ブリリアント・ローズ3号』が誕生したのでした。


【対決−2 〜怪盗がいっぱい!?〜

 てなわけでパーティアタック再び(笑)。まあ、賞金は生かして捕まえないと手に入らないんだし…大丈夫だよね(^_^;)?

(〜グラッフ邸・深夜〜)

 警備の配置は、庭と広間と倉庫入り口の三ヶ所。暗視能力がある者やレンジャー技能を持つ者などを中心にローテーションを組んだ警備組は、手薬煉引いて怪盗たちを待ち受けます。
 そして、真夜中を過ぎた頃…。

GM:広間の時計が夜中の12時を告げたその時、外から竪琴の音が聞こえてきた。…そのまま待機する?じゃあ精神抵抗してね。

《好奇の歌(キュアリオスティ)》:呪歌
 聞く者の好奇心をかきたてる効果を持つ魔法の歌。
 抵抗に失敗した者は、演奏者の姿を一目見たいという誘惑に駆られ、隠れていたとしても出てきてしまう。
 その効果が持続するのは演奏者の姿を見るまでで、既に見えている相手には効力を発揮しない。


GM:失敗したメンバーがぞろぞろと外に出てくると、「あそこだ、屋根の上にいるぞ!」という見張りの声がした。見ると、確かに屋根の上に竪琴を抱えた人影がある。
ルシアーナ:呪歌の効果は消えたの?他に、周りに怪しい奴はいる?
GM:赤外視(インフラビジョン)能力のあるメンバーには、茂みの陰で身を潜めてる誰かが見えるよ。
シャディール:あそこに誰か隠れてますっ!
ブリリアント・ローズ:(げげっ、ちょっと早いよ!)ふははははっ!待たせたな諸君!ブリリアント・ローズ、ここに参上ッ!

 実はこれ、鏡の魔力で変身したネフィス=ブリリアント・ローズ3号です(笑)。
 ブルーク扮するBR1号そっくりになって警備組を撹乱するのが彼の役目なんですが…。

ゲイル:俺が捕まえる!みんなは屋敷の中に戻っててくれっ!!
ルシアーナ:分かったわ!
GM:(げっ、まずい。ここには、まだあいつらも…)その時!死角になっていた別の茂みから、重装甲の戦士が飛び出して襲い掛かった!
シャディール:ネイスさんはどこにいるんです?
GM:(あ、そうか。当然あいつもいるわ)庭に出てるよ。じゃあ、ネイスが剣を抜いて迎え撃とうか。
チェルシー:じゃ、私たちは屋敷の中へ撤収ですわね!
GM:(…って、しまったぁ!これじゃ囮になってないぃ!)

 GM、迂闊(笑)。

GM:(いやいや、ファンタズムは人殺しも辞さない非情な悪役だから、ここは一つ派手な戦闘を…あれ?)ね、ねえ…もしかして、残ったのってネイスとゲイルだけ?他の人たちは?
一同:全員広間で待ち構えてまーす♪
GM:…………(まずい)。

 何が『まずい』かと言うと、まあプレイヤーたちは知る由もない事なのですが…。

《ファンタズムの事情=GMのネタばらし》
 今回、怪盗たちの中で唯一『PCを殺せる悪役』として設定したファンタズムですが、実は彼らは別の目的のために“雇われて”グラッフ邸に侵入したのです(…え、クリムゾン・レディ?彼女たちはいわばギャグキャラ扱いでしたから)。
 真の目的は何かと言うと、『ミラージュ、或いはブリリアント・ローズを捕まえ、黒幕に引き渡す事』
 そのためなら殺人も辞さない、筈だったのですが…さらに彼らにはもう一つの制限がありました。
 黒幕に与えられたもう一つの条件は、『グラッフ邸の警護についた冒険者の内、男性メンバーは殺さない事』
 理由はまだ言えませんが(笑)、この条件だとファンタズムは外に出ているゲイルたちを攻撃できなくなる訳で。

 こーして。今回のシナリオ最大の強敵は、いきなり
脅威ではなくなったのでした。どーしよー(大笑)。

GM:別の茂みから出てきた女魔術師が、屋根の上の人影に《雷撃(ライトニング)》を撃った…が、あれはどうやら幻影だったらしく、電光は空しくすり抜けた。で、同じく出てきたダークエルフは、ゲイルに向かって《恐怖(フィア)》の呪文をかける。
ゲイル:くっ!?(ころころ)…よし、抵抗した。引き続きBR(実はネフィス)に組み付く(笑)!
BR3号:なんでじゃあっ!?

 ファンタズムへの距離が遠いって事もあるだろうけど…
相手が君(ネフィス)だからのような気もするな、わたしゃ(^_^;)。

GM:(くっそー、本当なら《火炎球》や《戦乙女の槍(バルキリー・ジャベリン)》だって使えるレベルなのにぃ!)いい加減に眠れぇ!《眠りの雲(スリープ・クラウド)》ッ!《恐怖》ッ!
ゲイル:なんのっ、(ころころ)よっしゃあ、6ゾロ抵抗!ブリリアント・ローズめ、逃がさんッ(爆笑)!
GM&ネフィス:なんでじゃあッッ!!

 
ゲイルよ、君は何故そこまでBRにこだわるのかね(笑)?

GM:(数ラウンド同じような攻防が続いたので中略)…これでどぉだあ!《眠りの雲》拡大付きで達成値20!
ゲイル:うっ、それはさすがに…(ころころ)…寝た!
GM:(間髪入れずに)続けて《静寂(サイレンス)》!ふははは、これでもう自力では目覚めまいっ!
ネフィス:あのー、俺も寝てるんですけど…。
GM:ああ、君はブルークがちゃんと起こしに来るから大丈夫(…しかし参ったなあ。ファンタズムの連中、ゲイル相手に精神力を使い果たしちゃったよ。こりゃ撤退しかないかあ?)。

 攻撃呪文をビシバシ使ってれば、相当な強敵だった筈なのですが…効率の悪い無力化系呪文ばかり使った上にゲイルのダイス目が驚異的に良かったため、ファンタズムは殆ど本領を発揮できませんでした。あ〜あ。
 ゲイルを無力化できたとはいえ、神官戦士相手に闘っていたネイスは健在(足止めしか出来ないんだから当然ですが)。
 BR(ネフィス)を連れていくのも困難と判断したGMは、このままファンタズムを撤退させる事にしました。


(〜広間にて〜)

 さて、中庭の闘いが一段落着いた頃、広間のメンバーが何をしていたかと言いますと。

GM:君たちが待ち構えていると、突然広間の真ん中に光球が現れた。それは一瞬大きく膨れ上がり、弾けて無数の光り輝く蝶になると広間中に広がった!
ルシアーナ:シャディールとティノは倉庫の扉を背にして立って!他の皆はその場を動かないで!

 直接攻撃に弱い魔法使いを守りつつ同士討ちを避ける、なかなか的確な判断です。ルシアーナのプレイヤーはこういう時の判断力がずば抜けてますね。その代わり、ダイス運は今ひとつ恵まれてませんが(笑)。
 ところで上に出てきた『無数の蝶』ですが、実はこれ、単なる《幻影(クリエイト・イメージ)》の呪文です。《闇》の呪文だと《光(ライト)》であっさり無効化されるのが判り切っているので、演出でカムフラージュしてみました(^_^;)。
 正体が分かっていれば《呪文解除》一発で破れるんですが、実際にやってみると案外判らないものですね。

GM:(さぁて、Mの残り精神力がこれだけで、この状況だとこう動くから…)みんな、聴覚判定してみて?

 蝶の幻影に紛れてMとBR2号が忍び込んでいるのですが、警備組は判定の達成値が低く、気づきませんでした。
 そいでもって。

GM:シャディール、ティノ、君らの近くで誰かが《開錠(アンロック)》の呪文を唱えた。倉庫の扉が開いたよ。
シャディール&ティノ:えっ!?
GM:(有無を言わさず)続けて、古代語とは異なる韻律の不思議な呪文が唱えられた…が、何も起こらない。唱えた男は「ちっ、また外れか!」と忌々しげに呟いた。
シャディール:?…ええと、今のこれ(蝶)って多分幻覚の呪文か何かですよね?《呪文解除》出来ますか?
GM:多分ね。やってみる?

 視界が効かなくてはどうしようもない、と呪文を唱えるシャディール。
 …しかし、実はこの間もう一人の賊が、彼らの“足元をすり抜けて”倉庫に入ったのには気づかないのでした(笑)。

GM:幻影が消え去ると、そこには黒い装束に仮面を着けた男が立っていた。取り囲まれて観念したらしく、持っていたレイピアを投げ捨てて両手を挙げたよ。
チェルシー:さ〜あ、覚悟してくださいね♪
BR(2号):フッ…仕方あるまい。今回は私の負けだ、潔く認めるとしよう。
ルシアーナ:さて、《女神》も護った事だし、あとはこいつを官憲に突き出せば賞金もいただきね。
GM:(暫く間をおいて)……倉庫の中は確かめなくていいの?
ティノ:ん?ああ、見てみるけど…。
GM:するとだね……マーファ像が置かれていた筈の台座には何も乗っていない。
一同
ええっ!?

 警備組、しばし呆然。まあ無理もないですが…GMが最後に仕掛けたトリックに気付いてくれるかな?

チェルシー:盗まれましたの?…いつの間に。
シャディール:やられちゃいましたねえ…。
ルシアーナ:(溜息)…仕方ないわ。ソラリスさんに報告したら、こいつ(BR)を突き出して賞金だけでも貰いましょ…。
ティノ:あ〜あ、依頼失敗かぁ…。

 とぼとぼ広間を去る4人…って、あれれ?倉庫の中、ちゃんと調べなくていいのかな?
 ミラージュが幻術の使い手だって事、忘れてない?ねえ?


【終局 〜最後に笑うのは〜

 そして、人の去った倉庫には静けさが戻った――――いや。
「――まさか、こうも上手くいくとは思わなかったわね…」
 そう言って姿を現したのは、全裸の美女――シエラだった。
 彼女は近くにある彫像に近づくと、その中に手を突っ込んで――彼女が創った幻影だったのだ――マーファ像を取り出した。
「《黄昏の女神像》はこの中に…か。今度こそ、手がかりが掴めるといいけど…」
 小さく呟くと、彼女はもう一度周囲に人の気配がない事を確かめ、窓を開けて呪文を唱え始めた。
 みるみる変わりゆくその姿…現れた一羽の猛禽は、女神像を掴み満月輝く夜空へと飛び去った。

 こうして、《黄昏の女神像》はまんまとシエラ――――怪盗ミラージュの手に渡ったのだった。



 …と、いう訳でした(^_^;)。
 今回、ミラージュが使った手口は以下のようなものです。

 1、《幻影》の呪文で屋根の上に自分の幻を創って囮にする。(消費精神力2)
 2、《好奇の歌》で見張りたちを屋敷の外へ誘い出す。
 3、《幻影》の呪文で蝶の群れを創り、目くらましにする。(消費精神力2)
 4、《変身》の呪文で猫に変身、BRが扉を開けた隙に倉庫内へ忍び込む。(消費精神力4)
 5、《幻影》の呪文でマーファ像を隠し、自分は《保護色(カメレオン)》の呪文で隠れる。(消費精神力2+1)
 6、《変身》の呪文で大鷲に変身し、像を盗んで逃亡。(消費精神力4)

 以上で精神力消費の合計は15点。足りない分は使い魔の精神力を借りて補いました。
 あ、彼女は発動体を杖でなく指輪で持っているので、猫になっても発動体を持ち込めました、念のため。


 …ちょ〜っと、PCにとっては意地悪だったかな?
 でもプレイヤーは前にも彼女に遭ってるんだし、『幻術の達人』って設定だから、このくらいは勘弁してね(^_^;)。

 ちなみに今回捕まったBR2号(謎の男)は実は高位の魔術師でして、後日あっさりと脱獄しました(笑)。


 さて、今回のシナリオでは経験値の計算を少し特殊な扱いにしています。
 このシナリオにおける使命は下の3つでした。

 1、女神像を怪盗たちから護る。
 2、怪盗たちを生かして捕まえる。
 3、依頼を途中で放り出さない。

 3は当然として(笑)1か2のどちらかさえ果たせれば、シナリオは成功にするつもりでした。
 元々は怪盗たちの活躍を見せたいシナリオだったので、完全な達成は最初から望んでいなかったんです、私としては。
 もちろん、PCが上手に立ち回れば経験値を余分にあげるつもりでしたけど…まあ、たまにはいいよね?



 と、いうわけで第4話はここでお終いです。
 経験値は使命達成分の1000点に『クリムゾン・レディ撃退分(笑)』を加えて1025点となりました。
 レベルアップについては次の第5話冒頭で書く予定です。

 ここまで読んで下さった方、お付き合い頂きありがとうございました。m(__)m
 それではまた、近いうちに…。

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