第5話
記憶の間隙
【前奏 〜30分の闘い〜】
(GM、孤軍奮闘す)
――――それは、プレイ開始予定1時間前の出来事。
チェルシーのプレイヤー:ごっめーん!今日、急に行けなくなっちゃった(^_^;)。
GM:…だから、そーゆー事は、せめて前日に言ってよぉ…(T_T)。
例によって例の如くといいましょうか…今回もチェルシーはお休みです。いいかげん飽きたんですけど、このフレーズ(涙)。
用意していたシナリオが使用不能になったGM、慌てて使えそうなアイデアを手持ちの資料から探します。
GM:え〜と、ネタ本のこれを原型にあのキャラの裏設定を使って、あーしてこーして…(データ作成中)。
プレイヤー一同:まだか〜(笑)?
ふ、ふふふ…私の苦労も知らないで(壊笑)。
ともかく30分後にはどうにかプレイ可能な体裁を整えたGM、さっそくセッション開始を宣言するのでした。
前回の冒険から成長した彼らのデータは以下の通りです。(詳しい設定を見るなら名前をクリック)。
キャラクター名 種族・性別・年齢 技能 ゲイル・グラード 人間、男、17歳 シーフ3/バード1/セージ1/レンジャー1
一般:ヒーラー3シャディール・リグト ハーフエルフ、男、29歳 ソーサラー2/シャーマン1/セージ2 ティノ・アッサム 人間、男、18歳 シャーマン2/レンジャー1/ファイター1
一般:フィッシャー3ネフィス・クレール 人間、男、15歳 シーフ3/プリースト(チャ・ザ)1 ルシアーナ・ファルサラス 人間、女、23歳 ファイター3/レンジャー1
一般:ウェイトレス3
今回、成長したのはシャディール(セージ1⇒2)のみです。
他のメンバーは、ひとまずメイン技能を上げるために経験値を温存しています。
【導入 〜新王国歴522年、9月18日〜】
(その1 〜『夕闇亭』にて〜)
――――それは、グラッフ邸の警備を終えた翌朝の事だった。
ゲイル:やれやれ、昨夜はえらい目にあったな…。オヤジさん、朝メシ頼むよ。
ジェラルド:…………ん、あぁゲイルか……(気だるく目を伏せる)。
ゲイル:どーしたんだよ?元気ないなあ。心配事かい?
ジェラルド:…ああ。いや、別に大した事じゃないんだがな。……落し物を、してしまってな。
ゲイル:ふうん。大切なもんなの?俺で良かったら探すけど。
ジェラルド:そうだな……家に昔から伝わる古い護符だ。大切というほどじゃないが、捜してくれるなら有難い。
ゲイル:判った。まずどんな形か、それと落とした場所の見当がつくなら教えてよ。
ジェラルド:場所は、多分表通りだが…はっきりとは判らん。形状は銀鎖の首飾りで…。
ゲイル:ふんふん?
ジェラルド:ペンダントヘッドの部分が人の眼球を象ってるんだ。後半分には古代文字がびっしりと刻印してある。
ゲイル:(沈黙)……………………オヤジさん。それって呪いのアイテムか何か?
ジェラルド:そんな事はない。単なる古い護符だ(きっぱり)。
ゲイル:……ま、まあ出来るだけ捜してみるよ。
依頼人:ジェラルド・ヴェルナン、『夕闇亭』の亭主。
依頼内容:紛失した護符(アミュレット)を捜す。無期限で、報酬は上質の酒1ボトル(笑)。
(その2 〜『遥かな歌声亭』にて〜)
――――同日、昼下がり頃…。
ルシアーナ:…ふわぁ〜あ。マスター(←GMにあらず。『店の主人』の意)、朝御飯お願い…。
GM:と、君が2階から降りてくるとだ。この店のマスターことフォーさんが、息子のクリフくんと何やら深刻な表情で話し合っている。
ルシアーナ:んー?なになに、どうかしたの…?
フォー:ああ、お前さんか…。実はな、ここ最近の売上のことなんだが…。
歌姫たちの人気もあって繁盛していた筈の《歌声亭》ですが、実際に勘定を計算してみると何故か殆ど儲かっていないとの事。
倉庫の食材や酒は減っているのに、その分の収入が全く入っていないのでした。
しかもフォーもクリフも「いつ、誰から料金を取り損ねたのか、さっぱり判らない」といいます。
GM:この状態があと一ヶ月も続いたら、この店は潰れるねえ…どうする?
ルシアーナ:…安心して、マスター。この事件、あたしたちが見事解決して見せるわ!
フォー:そ、そりゃ有難いが…いいのか?こういう事情だから、うちも報酬なんて払う余裕はないぞ?
ルシアーナ:いやだ、水臭い。あたしたちの仲じゃない……ツケのきく店をむざむざ潰させるわけにはいかないわ(笑)。
依頼人:フォーディアス、『遥かな歌声亭』の亭主。
依頼内容:料金取り損ねの謎を調べ、原因を取り除く。報酬は向こう一週間の昼食無料権(笑)。
仲間たちも(チェルシーを除く)続々現れ、みんなは一致団結してこの怪事件に挑むのでありました。
ルシアーナ:まーさーか、嫌とは言わないでしょうね?
シャディール:や、やだなあ。そんなわけないじゃないですか…あはは。
ゲイル:ネフィス、どうした?顔色が悪いぞ(笑)。
ネフィス:あ、あのその……協力させて頂きます、ハイ。(←前回の事件がトラウマになったらしい)
ティノ:俺の意見は誰も訊かないの?
GM:何か異論でも?
ティノ:……えーと。ありません(笑)。
……ま、現実はこんなもんです(大笑)。
【展開 〜夜の大捜査線〜】
(〜『遥かな歌声亭』にて〜)
まずは、何がどうなっているのかを明確にする必要があると考えた一同は、色々と推測を始めます。
ルシアーナ:食材は減ってるのに、収入はない…気づかないうちに盗まれてるってことかしら?
ネフィス:誰にも気づかれない…姿が消せる…フェアリーの大軍が夜な夜な忍び込んで食い物を盗んでる、とか?
それを聞いて、GMは思った。
確かに妖精族は《姿消し(インビジビリティ)》の魔法が使えるけど…何が悲しゅうて彼らが街の宿屋から食料を盗まねばならんのか。
つか、なんぼなんでも可憐な妖精族が、夜空を雲霞のように飛んで来て食料を漁る情景ってのは想像したくないぞ。
…などとプレイヤーに言う訳にもいかず、生温い目で見守るGMなのでした。
まあ、犯人の推測はともかくとして(まだ情報も足りませんし)、プレイヤーたちは次のような方法で調査をする事にします。
1、注文の記録(シャディールが担当):客から受けた注文内容を逐一記録して、実際に減った食料と照合する。
2、倉庫の張り込み(ティノ&ネフィスが担当):不審者が忍び込まないかどうか確かめる。
3、店内の監視(ルシアーナ&ゲイルが担当):客の中に怪しい動きをする者がいるかどうか見張る。
これだけやれば、何が原因であれ不自然な事が起きたら判る筈です。
特に、倉庫の張り込みをする二人は《姿消し》対策として、床に小麦粉を撒いておく念の入れようです。
…何も知らずに張り切ってるなー、倉庫組。
さて、その日の夜は何事もなく過ぎて……と、思いきや。
ルシアーナ:…あら?ゲイル、服の肩口が破れてるけど、どうかしたの?
ゲイル:へ?……いつの間に。どこかで引っかけたっけ?
GM:よくよく店内を見てみると、君らの知らない内に椅子の一つが壊れてるね。床にはスープをひっくり返したような痕跡もある。
ルシアーナ&ゲイル:……??
この時点では、これが何を意味するのか解らないプレイヤーたち。引き続き、調査を続けますが…さてさて?
(9月19日〜調査2日目〜)
明け方から昼近くまで睡眠を摂った冒険者たち、客の増えだした《歌声亭》で今度こそはと気合を入れて見張ります。
昼間のうちは特に異変もなかったのですが、夕暮れの書き入れ時になって…。
GM:ルシアーナは店内でウェイトレスの仕事、ゲイルは外の路地から店の入り口を見張ってるんだよね?するとだ、ガシャッカランカランと床に食器の転がる音がした。そっちを見るとテーブルの一つがひっくり返っていて、傍に鼻血を流した男が倒れている。
ルシアーナ:何…ケンカ?
GM:さて、どうだろうね?喧嘩の相手らしき人物は見当たらない。他の客はきょとんとした表情で男を見ている。…それにだ、君は誰かが言い争うような声は聞かなかった。それどころか、テーブルがひっくり返った事さえ今見るまで気づかなかったんだ。
ルシアーナ:??どゆこと?
GM:君の感覚そのままを説明すると…君が瞬きしたかどうかという一瞬の内に、大きなテーブルがひっくり返った状態になっていたという事。途中経過は全くなしでね。
ルシアーナ:映画のフィルムを途中の数秒間切って繋げたような感じ?…時間がすっ飛んだ?
鼻血を出していた男はかなり泥酔しているようで、話を訊けそうにもありません。逆にフォークを振り回して暴れる始末です。
ルシアーナ:こらッ、大人しく…痛ッ!(腕を刺された)
ゲイル:俺にもその騒ぎは聴こえるよな?店に入ってって男を取り押さえる。
気絶させられた男を外に運び出すゲイル。その間に、GMはルシアーナに精神抵抗ロールを要求します。
ゲイル:やれやれ、店に戻ったらルシアーナに詳しい話を訊くぞ。
GM:…ゲイルが帰ってくるとだ。ルシアーナ、外で見張りをしてるはずのゲイルが何故か店内に入ってきたぞ。
ルシアーナ:?(戸惑いながらもとっさに調子を合わせるプレイヤー)あら、ゲイル。あんたの持ち場は外でしょ、何かあったの?
ゲイル:いや、何かって…さっきの騒ぎが何だったのか、訊こうと思って。
GM:ところがルシアーナはゲイルの言う『騒ぎ』について心当たりがない。そして君がふと見回すと、店内が随分散らかっている。
ルシアーナ:何よ、これ…ゲイル、まさかアンタがやったんじゃないでしょうね?(笑)
ゲイル:待て、おいっ(笑)。…本気で待て。ルシアーナの腕にさっきの怪我は残ってないのか?
GM:ああ、確かに彼女は腕に怪我をしてるね。彼女自身は指摘されて初めて気づく訳だけど。
ルシアーナ:いつの間にこんな怪我したのかしら?(笑)……う〜ん、これはもしかして…記憶がとんでるのかな?
戦士であるにも拘らず(プレイヤーが)頭脳派のルシアーナ。しかしキャラクター自身にセージやソーサラー等の知識系技能がないため、それ以上突っ込んで推論できないのが泣き所です(笑)。
GM:さて、その頃…シャディール、3回ほど知力判定してくれる?
シャディール:知力ボーナス+冒険者レベルで良いんですね?(ころころころ)…うう、出目が悪いなあ。
GM:その達成値だと、3回目で気づく訳か。営業時間も終わりに近づいた頃、君は妙な事に気がついた。君が記録していた帳面だけど、途中の注文内容に、書いた憶えのない注文が随分ある。
シャディール:ええ!?筆跡は僕のなんでしょうか?
GM:うん、だからなかなか気づかなかったんだろうけど、間違いなく君の字だと思うよ。
さて、最後に残った二人ですが。
GM:ティノとネフィスは倉庫に隠れて見張ってたんだよね?…特に不審な人物の出入りはなかった、以上!(笑)
ティノ&ネフィス:待てやコラアッ!!(爆笑)
だってー、事件の真相上そうなるんだもん(笑)。
今日の調査を終えて部屋に集まった一同は、互いの情報を照らし合わせて推理を始める事にします。
ルシアーナ:(話し合っている)…だから、時間そのものが跳んでる訳じゃないと思うのよ。記憶を消されてる可能性が高いんじゃないかな…これ以上は、セージ技能がないから解んないけど(笑)。
シャディール:(知識判定ころころ)……フッ、駄目ですね。何にも思い出せません(笑)←ダイス目が悪かったらしい。
ゲイル:(同じく知識判定ころころ)精霊魔法に《忘却(フォーゲット)》って呪文があるらしいぜ?グレムリンしか使えねーけど。
《グレムリン》:モンスター2レベル(種別=妖魔)
暗褐色の身体に蝙蝠を思わせる翼を持った小型の妖魔。別名『空の小鬼』。2レベルまでの精霊魔法を使う。
陰険な性格で、性質の悪い悪戯を好む。その昔、ペガサスに乗った英雄グラックスを悪戯で死なせたという伝説で有名。
《忘却(フォーゲット)》:精霊魔法2レベル
混乱を司る精神の精霊レプラコーンの力を借りて、一時的に対象の記憶を失わせる。
ただしグレムリンか翼人族(フェザーフォルク)にしか使えないので、翼を持つ種族だけが使える呪文だと考えられている。
身についた技能や言葉、専門的知識などは残るが、自分の素性や仲間たちの事などは一切思い出せなくなる。
勇者グラックスは乗っていたペガサスにこの呪文をかけられ、振り落とされて死んだのだと言われている。
ネフィス:…じゃあ、グレムリンの大群が夜な夜な飛んできて、倉庫を荒らしている!?(爆笑)
ティノ:空から降りてきたグレムリンが、宿に向かって一斉に「ふぉげーっと、ふぉげーっと…」(笑)
んなわけあるかい。つーか、いい加減に『大群襲来説』から離れろお前ら。
シャディール:えーと、帳面を見て注文内容と倉庫に残ってる食材の数をチェックしますけど…ちゃんと合ってますか?
GM:そうだね。実際に消費された食材の量は帳面に書かれたメニューと一致するようだ。
シャディール:でも、僕もフォーさんもそんな注文を受けた憶えはない、と。
GM:うん。
ティノ:どーゆーことかな?
ルシアーナ:…つまり、マスターは普通に注文を受けて、料理を作ってたわけね?倉庫から食材を持ち出したのもマスターたち本人。ただ、魔法か何かで記憶を消されて客も店側も注文の事自体を忘れたから代金を取れなかった…。
ネフィス:……ちょっと待て。それじゃ、ずっと倉庫で見張ってた俺たちって…?
ゲイル:怪しい事なんて起きないはずだよな、入ってきたのはフォーさん親子だけなんだから(笑)。
ネフィス:なんじゃそりゃーっ!!まるっきり無駄骨かーいッ!?(号泣)
まあ落ち着け(笑)。気持ちは解らんでもないが、徒労を厭う奴は立派な探偵にはなれないぞ?
今回のケースでは『外部からの侵入者が食料を盗んでいる』という可能性を消去出来た訳で、まんざら無意味でもないし。
と、ネフィスたちを慰めるGMでしたが……聞いちゃいねーよ、こいつら。
ルシアーナ:店の外に出てたゲイルが影響を受けなかったってことは、多分魔法がかかってたのは店内だけね。明日からは倉庫の見張りを止めて、全員の配置を決めなおしましょ。
話し合いの結果、決まった配置は次の通り。
ゲイル:店の外から入り口を見張り、出入りする客をチェック。
シャディール:記憶のとぶ正確な時間帯を知るため、引き続き注文を記録。
ティノ:店内で怪しい呪文なりアイテムなりを使おうとする者がいないか監視。
ネフィス:店の2階から入り口を見張り、出入りする客をチェック。
ルシアーナ:いつも通り、いざという時の用心棒を兼ねてウェイトレスのバイト(笑)。
かなり真相に近づいてきた冒険者たち。さて、どうなりますやら…?
(9月20日〜調査3日目〜)
この日は判定のみなので途中経過は省くとして(笑)、全員の情報を照合した結果、3組の容疑者が浮かび上がりました。
1、おどおどした小心そうな中年男
2、最近、同じ時間帯に来るようになった大男と絶世の美女のカップル(?)
3、黒いローブを着て、フードで顔を隠した怪しげな男(笑)
客の中で『2日連続で店に来て、記憶のなくなる時間帯に出入りした客』は、この3組だけです。
…もっとも、ゲイルとネフィスの『記憶術』判定が成功していれば、の話ですけどね(笑)。
(9月21日〜調査4日目〜)
昨日絞り込んだ容疑者をそれぞれ個別に調査する冒険者たち。気分は名探偵♪
ゲイル:まずは、あの黒ローブからだな…怪しすぎて、逆にシロのような気もするが(笑)。
GM:店を出た彼を尾けて行くとだね、どんどん『常闇通り』のいかがわしい界隈に入っていくよ。
ちなみに、相手に気づかれては元も子もないので尾行はゲイル一人でやっています。
ゲイル:…うーん、もしかしていきなりビンゴか?他の連中も呼ぶかなあ…?
GM:その男は人目を忍ぶように辺りを見回して、傍にあった宿らしき建物に入った。
ゲイル:っと、俺も中に…。
GM:入るとすぐに受付がある。顔が見えないように、窓にはカーテンがかかっていて…まあ、ラブホ(=ラブホテルの意)みたいな雰囲気だと思ってくれ。「お客さん、うちは初めてだね?」と受付の男が声をかけてくる。
ゲイル:あ、いや俺は…。
GM:どんな子が好みだい?若い細面から筋骨隆々の逞しい奴、受け攻め取りそろえてるよ?(笑)
ゲイル:…って娼館、しかも男娼かよッ!?
受け攻めどちらの趣味もない(笑)ゲイルは慌ててそこを飛び出したのでした。
ティノ:あ、ゲイルお帰りー。どうだった?(笑)
ゲイル:シロだシロッ!!二度と追わんぞ俺はッ!
ゲイルが尾行に行っていた間にカップルの方は帰ってしまいました。5人はまだ残っていた中年男に直接聞き込む事にします。
ルシアーナ:(営業スマイル)お客様、そろそろお会計をよろしいでしょうか?
GM:食事の後、手持ち無沙汰に首の銀鎖を弄っていた彼は、ビクッと肩を震わせた。
ゲイル:(後ろから近づいていた)…銀鎖?GM、そいつの手を掴んで鎖を引っ張り出すぞ。
GM:はい、そうするとですね、ジャラリと出てきたのは目玉を象った不気味なペンダントでした(笑)。
冒頭に出てきたジェラルド氏の依頼、忘れてなかったんだねー。偉い偉い(笑)。
【対決 〜アタシの包丁が真っ赤に燃えるゥゥ!!〜】
いきなり腕を掴まれ、険しい表情の二人に睨まれた中年男は、怯えきった声で叫びました。
中年男:や…止めてくれぇ、助けてくれェ御守りさまァ〜!!
ルシアーナ:!?首飾りをひったくる!
GM:君が伸ばした手は一瞬遅く、首飾りは眩い光を放った!ヘッドに刻まれていた古代文字が輝き、空中に魔法陣を描く!
外にいた3人:店内に駆けつけます!
GM:魔法陣からズルリと抜け出るように現れたのは、巨大な目玉に鞭状の触手と繊毛のような足(?)を生やした怪物だ。セージ技能のある人だけ知識判定!
ゲイル:これのどこが単なる古い護符なんだよ、オヤジさぁぁんっ!!!!(絶叫)
《フォグロウム》:モンスター6レベル(種別=魔神)
1メートル近い巨大な目玉に触手を生やしたような姿の下位魔神(レッサーデーモン)。別名『忘却魔神』。
先端に鉤爪のある触手で攻撃する他、周囲にいる生物の記憶を“喰う”能力を持っている。
《記憶喰らい》の能力は、フォグロウムの視界内にいる生物に対して無差別に発現し、魔神自身にも制御できない。
《忘却の瞳(フォーゲット・アイ)》:マジックアイテム
人の眼球を象った意匠の護符…ではなく、『忘却魔神』そのものの姿を象った呪符(タリスマン)である。
古代の魔術師によって魔神を封じ込められたこの呪符は、所持者の意により《記憶喰らい》の能力を引き出す事が出来る。
但し、その能力は元々無差別に発揮されるため……所持者も抵抗に失敗すると記憶を喰われてしまう(笑)。
今回フォグロウム本体が出てきたのは、作成者が魔神を護衛役としても使えるようにしていたから。
…あ、ちなみにこれらはGMのオリジナルですので、ルールブックのどこを捜しても載ってません。念のため。
GM:…というわけで、知名度14以上を出せた人は以上のような事が判った(笑)。
シャディール:質問!《記憶喰らい》に対する精神抵抗の目標値はいくつでしょう?《耐呪(カウンター・マジック)》は有効ですか?
GM:知識判定に+2以上で成功したなら教えてあげよう。目標値は16で《耐呪》は有効。それから使用するのはラウンドの頭にダイスを振って5・6が出た時だけだ。確率3分の1だね。《記憶喰らい》を使ったラウンドには攻撃もしてこない。但し…。
一同:但し?
GM:記憶を喰われたが最後、その人は今回の事件を忘れてしまうから。全員が抵抗に失敗したら、シーンを冒頭のマスターが溜息をついている場面に戻す。でもって君たちは事件を最初から繰り返す事になる。当然『歌声亭』は潰れてシナリオも失敗ね(爽)。
一同:ひえええッ!?
このくらいのリスクがないと、面白くないでしょ?(笑)頑張って早く倒そうね♪(←鬼)
ルシアーナ:…って、ちょっとッ!あたし、武器も鎧も装備してないわよ!?ウェイトレスの格好だから!
ネフィス:6レベルの魔神なんて、シーフの俺にどーしろと?(笑)←物陰に隠れた
ゲイル:例によってエストックを抜く!普通の武器、効くだろうな?
シャディール:ネフィス以外の4人に《耐呪》4倍消費!
ティノ:《光の精霊》!いけェェッ!!
かくして戦闘が始まりました…が、さすがにルシアーナが不参加では勝ち目がありません。
そこでGMはアドリブで救済策を考えました。
GM:ルシアーナに武器がない事を見て取ったフォーさんは、「これを使え!」と包丁&フライパンを放った!(笑)
ルシアーナ:あの…こんなもんで一体どーしろって?
GM:包丁は筋力5相当の短剣(ダガー)、フライパンは小型の盾(スモールシールド)として扱う。存分に闘うが良い(笑)。
シャディール:その包丁に《火炎武器(ファイア・ウェポン)》をかけます!頑張ってくださいッ!(爆笑)
フライパンを片手に、炎に包まれた出刃包丁で魔神と闘うウェイトレス……素敵だ(一同大爆笑)。
ルシアーナ:…ええい、もうッ!やりゃあいいんでしょ、やりゃあっ!!
冒険者たちは覚悟を決めたルシアーナとゲイルを前衛に、シャディールとティノが後方から魔法で援護、ネフィスは《精神力譲与》でシャディールを補助する作戦に出ました。もっとも、ネフィスは早々に精神力を使い果たして前衛に押し出されましたが(笑)。
回復役のチェルシーが不在なので僅かな傷でも命取りになりかねないのですが、《強打》や《抵抗専念》などのオプションを駆使した5人は徐々に魔神を追い詰めていきます。
ゲイル:(ころころ)ちっ、回らなかったか!ダメージは11点!
GM:防護点でかなり防ぐから、それじゃまだ死なない(しかし、残り生命力は一ケタ)。
ルシアーナ:いい加減くたばんなさいッ!(ころころ)…よし回ったッ!ダメージ15点!!
GM:ぐはっ!ま…まさか、魔神がウェイトレスに斃されるなんてッ!!(一同爆笑)
【終局 〜かくて、宿は救われた〜】
GM:おめでとう、君たちは心身ともにズタボロになりつつも魔神を倒す事に成功したわけだ。
シャディール:記憶がなくなった上に、気絶寸前ですー(笑)。
ルシアーナ:ホントに…今回はさすがに死ぬかと思ったわ。
GM:で、ね。魔神が消え去ると同時に、周囲から歓声が上がる。
ゲイル:…へ?
GM:ここが大都市の真ん中だって事、忘れた?君たちの闘いぶりは大勢のギャラリーが見てたんだよ(笑)。
ティノ:俺たちってば、ゆーめーいじーん?(笑)
GM:そうだねえ、特に出刃包丁とフライパンで魔神を倒したウェイトレスは当分冒険者の間でも語り草になる事だろう(一同大爆笑)。
いや、冗談抜きで。『遥かな歌声亭』は『鬼殺し』の亭主と『魔神殺し』のウェイトレスがいる店って事になりますな(笑)。
ゲイル:あ、GM。目玉の護符(=《忘却の瞳》の事)はどうなったんだ?
GM:それだったら、近くの床に転がってるよ。さっき倒した魔神はこの中に吸い込まれたようだったけど…どうする?返す?
ゲイル:……まあ、約束だし。
そして『夕闇亭』へ戻ったゲイルですが。
ジェラルド:おお、見つけてくれたのか!ありがとう、助かるよ。
ゲイル:オヤジさん。それ、物凄く危険なシロモノみたいだから。ちゃんと仕舞っといてくれよな?
ジェラルド:ん?はっはっは、わかってるわかってる。気にするな(笑)。
ゲイル:…………オヤジさ〜ん……(T_T)。
さて、ここからはちょっと補足というか、恒例のネタ晴らしを。
事件の犯人(?)だった中年男ですが、彼は偶然《忘却の瞳》を手に入れただけの小心な男でした。
気が弱い上に酒によって失敗を繰り返してきた彼は、拾った御守りが自分を助けてくれる(正確には、自分のやった失敗を周囲からも自分自身からも忘れさせる)事に気がついたんですね。
もちろん魔神の事は知りませんでしたが、無意識のうちにお守りに頼り切るようになっていたわけです。
本人に悪気はなかったし、そもそも食い逃げをした自覚もなかったので、フォーさんは彼を役人に突き出しませんでした。
被害金額のいくらかは分割で弁償するように約束させましたけどね(笑)。
それと、途中出てきた容疑者の内、大男と美女のカップル(?)は後のシナリオで出てくる予定のNPCだったりします。
色々と裏設定もあるんですが、今回は殆ど関わらずに終わったのが心残りでした。
この二人は第9話で再登場しますので、詳しい話はその時にでも。
後は…ジェラルド氏がこんなヤバいアイテムを持っていた事にも、いちおう理由があります。
が、それについてはネタばれになりかねないので、当分の間は秘密にさせて頂きます(笑)。
と、いうわけで第5話はここでお終いです。
経験値は使命達成分の1000点にモンスター分を加えて1012点となりました。
レベルアップについては次の第6話冒頭で書く予定です。
ここまで読んで下さった方、お付き合い頂きありがとうございました。m(__)m
それではまた、近いうちに…書けるといいなあ(←殴)。