第6話
愛の嵐
【前奏 〜警告!ギャグ注意報(笑)〜】
(GMは企んだ)
さて、今回のセッションですが…ティノのプレイヤーが家庭の事情で来られないので、予定外のシナリオを組む事になりました。
…………またですかい(T_T)。
まあ、前回と違って数日前に予定が判っていたので、ネタを考える時間があったのは幸いでした。
今回は某オカルトギャグ漫画の、とある話を元ネタにシナリオを組んでみます…もちろんコメディタッチで。
ここで読者様に警告。この話は、はっきり言って駄ギャグでございます。しかもほんのりと女性向風味です。
ホモネタギャグで有名(?)な《パタ●ロ!(by魔夜峰央)》的ノリが嫌いな人は、読むのを避けて下さいませ(^_^;)。
前回の冒険から成長した彼らのデータは以下の通りです。(詳しい設定を見るなら名前をクリック)。
キャラクター名 種族・性別・年齢 技能 ゲイル・グラード 人間、男、17歳 シーフ3/バード1/セージ1/レンジャー1
一般:ヒーラー3シャディール・リグト ハーフエルフ、男、29歳 ソーサラー2/シャーマン1/セージ2 チェルシー・ノア 人間、女、20歳 プリースト(マイリー)3/ファイター2/セージ1
一般:ハウスキーパー3ティノ・アッサム 人間、男、18歳 シャーマン3/レンジャー1/ファイター1
一般:フィッシャー3ネフィス・クレール 人間、男、15歳 シーフ4/プリースト(チャ・ザ)1 ルシアーナ・ファルサラス 人間、女、23歳 ファイター4/レンジャー1
一般:ウェイトレス3
前回の経験値で成長したのは、チェルシー(ファイター1⇒2)、ティノ(シャーマン2⇒3)、ネフィス(シーフ3⇒4)、ルシアーナ(ファイター3⇒4)の4人です。
5回の冒険を経て、全員一通りレベルアップしました。そろそろ『新米冒険者』から『新米』の二文字が取れてくる頃ですね。
……しかし、ごめんよ皆。今回は真っ当な冒険じゃないのさ♪(含笑)
【導入 〜新王国歴522年、11月7日〜】
(その1 〜《夕闇亭》にて〜)
――――ゲイルに届いた一通の手紙から、この事件は始まった。
ゲイル:招待状……セレンから?
GM:はいな。内容はこうね。
『親愛なるお兄さま。この度、私の所属している《ファレーズ劇団》がオラン大劇場で舞台公演をする事になりました。
公演は10日の昼からです。もし良かったら、いらしてください。
PS.舞台を使った練習は今日からなんですけど…初めての大役なので心細くて。お兄さまに来て頂けると嬉しいです』
GM:…だそうだ。どうする?
ゲイル:今日からかよ(笑)。……まあ、顔出してみるか。面白そうだし。
協力的なプレイヤーって、好きだなあ(笑)。
この手のシナリオってPCが徹底的に『トラブルを避けるような行動』をとると、絶対に上手くいかないんですよね。
まあ、断り難いようにプレイヤー自ら設定した家族を利用したという説もありますが(^_^;)。それはさておき。
セレン:来て下さったんですね!ありがとう、お兄さ…いえ、ゲイルさん。
ゲイル:よ、よォ。頑張ってるか?(照れ照れ)
セレンはなんと今度の舞台での主演女優でした。
相手役の主演男優ヴィルマー(ちなみに女好き)がセレンに言い寄っているのを邪魔したり、劇団長のファレーズがゲイルを俳優に勧誘してみたりと若干のトラブルを含みつつも、その日はつつがなく終わります。
…………終わっちゃ話にならないって?実はこの導入そのものが『彼』を罠に嵌めるための伏線なのですよ(邪笑)。
(その2 〜ネフィスの自宅にて〜)
翌日8日、ネフィスの所には一人の青年が人捜しの依頼に来ていました。
依頼人:実は、ネイスから貴方の事を聞きまして。少ない手がかりで短期間に女性を捜し当てたとか。
ネフィス:あー……、確かにそうですけど……。なあ、無理がないかGM?(笑)
GM:やかましいわい。
まあ見つけた(←第4話参照)と言っても偶然の賜物で、ネフィス本人は大馬鹿やってましたからね(苦笑)。
しかし結果だけを見れば依頼内容は完璧に果たしてるので、話だけ聞いた人が依頼に来ても不思議はない…よね?
ネフィス:とにかく、依頼の方は判りました。この似顔絵の女の子(13歳くらい)を捜せばいいんですね?
依頼人:はい、お願いします。このまま放っておいたらどんなトラブルを巻き起こすか…。
ネフィス:…はあっ!?
依頼人:あっ、いえっ。何かトラブルに巻き込まれるかもと思うと心配で心配で(←棒読み)。なるべく早く見つけてやって下さい。
ネフィス:は、はあ。…そう言えば、あなたの名前をまだ聞いてませんでしたけど?
依頼人:僕はファーシアンといいます。気を付けて下さいね、見た目は子供ですが彼女は魔法の使い手でもありますから…。
依頼人:ルーヴェ・ル・ファーシアン、元冒険者で治療師。《賢者の学院》所属の正魔術師でもある。
依頼内容:とある魔術師の少女を捜し、連れ戻す。 報酬:1600ガメル
さて、GMがネフィスに依頼人のファミリーネームしか教えなかった事にお気づきでしょうか?
実は依頼人と“魔術師の少女”は以前のキャンペーンのPCで、プレイヤーたちは2人がどんな性格・関係かを知っています。
ファーストネームを言って正体が判るとシナリオの概要まで悟られかねないので、余計な警戒心を抱かせないためにプレイヤーの聞き慣れないファミリーネームの方を教えたのでした。姑息ですねー(笑)。
(その3 〜《遥かな歌声亭》にて〜)
ゲイルが手紙を受け取ったのと同じ日、ルシアーナたちの所にもセレンからの招待状が届いていました。
但しこちらには練習の事までは書いておらず、『当日、公演を見に来て欲しい』というだけでしたが。
ルシアーナ:ふーん、舞台ねえ…。その劇団って有名だったりする?
GM:うーん、そこそこ有名かな。ここ(歌声亭)の客にも以前の公演を見た人がいるんだけど、かなりの出来だったようだ。ただ、一番の花形男優が女癖の悪さで評判悪くてね〜。女性客や仲間の女優にまでちょっかいを出すらしい。
ルシアーナ:あら、面白そうね(笑)。みんな、行ってみる?
もちろん他の面々に異存はなく、彼らは招待に預かる事にしました。
という訳で、あっという間に舞台当日です。
【展開 〜歌劇・《嵐ヶ丘》〜】
(〜オラン大劇場にて〜)
開演時間よりも早めにやって来たゲイルは、妹の様子を見に楽屋裏へ寄ったのですが。
ゲイル:……ナニ?あの女たらし、じゃなくて主演の男優が寝込んだ?
セレン:ええ、何でもオタフク風邪(一同笑)だそうで…。控えの俳優さんもお休みだし、どうしましょう?
団長:どうだろう?いっそ、ここは君が代役をやってくれないかな?もちろんギャラは弾むよ(笑)。
ゲイル:正気か、アンタらッ!?ど素人に、いきなり主役が務まるかよッ!
GM:務まるかどうかは君のダイス目次第だ。台詞を覚えるにはシーフ技能の〈記憶術〉。演技は〈変装〉に含まれるし、ゲイルはバード技能も持ってるから歌だってバッチリだぞ?(笑)
かくて、なし崩しに代役を務める羽目になったゲイルでありました。
ちなみに劇の内容は以下のようなものです。(※現実の《嵐ヶ丘》とは何の関係もありません)
『100年ほど昔、恋に落ちた二人の男女。片や貴族の青年、片や平民の街娘。人目を忍んで愛を育む二人。
だが、青年にはもっと怖ろしい秘密があった。彼の正体は闇の貴族――吸血鬼(バンパイア)だったのだ。
恋人の不自然な態度に疑問を感じ、その正体に近づいていく娘。そして、遂に訪れる破局の時。
魔物の本性を剥き出した青年と、娘を護るために単身立ち向かうファリスの神官戦士。果たして、娘が選ぶのは…?』
GM:…と、ゆーよーな内容なわけだ。有名な悲恋の伝承を劇にアレンジしたものらしい。バードかセージ技能の知識判定に成功すれば原作を知ってるよ。
一同:(ダイスころころ)知ってま〜す。
GM:だったら、原作からの変更箇所も判るね。終盤に出てくるファリスの聖戦士だけど、原作にはいなかった。登場もなんか唐突だし、後付けしたのがバレバレな感じ。
チェルシー:(首傾げ)どういうことですかあ?
GM:内容が魔物と人間の恋物語だからねえ…頭の固い聖職者対策でない?この劇場、ファリス神殿のすぐ傍だし。
一同:…なるほど(笑)。
そんなこんなで開演。もちろんゲイルが主演なんて他の仲間たちは知らなかった訳ですが…。
GM:劇が進んで、主役の青年(=吸血鬼)の出番が来た。とゆーわけで、ゲイル、出ておいで〜(笑)。
ゲイル:ううッ、なんで俺がこんな事を…。
チェルシー:…ねえ、お母さん(←ルシアーナの事らしい)。確か主演の俳優って女癖の悪い軟派男じゃありませんでした?(笑)
GM:さて、舞台の上にいる吸血鬼役の青年とゲイルが同一人物だと気づきたい人は〈知力判定〉で12以上を出すのだ!(笑)
確率的には50%ぐらいなんですが…ここで全員成功する辺りがなんとも(^_^;)。
ルシアーナ:ふ〜〜ん…(←判定に成功した)。そうなの…ゲイルって女ったらしのゲス野郎だったのね、知らなかったわ(笑)。
ゲイル:ごーかーいーだあ!!
GM:周りの女性客からは「あら、いつもの人と違わない?」とか「でも、こっちも素敵v」という声が聴こえてくるけど…。
シャディール:は、僕たちの都合の良い耳には、そんな声は全く聴こえません(一同爆笑)。
GM:……良い仲間を持ったねえ、ゲイルくん(笑)。
ゲイル:……お前らなあ……。
更に幾つかの判定(台詞や歌を覚えているか、演技は上手く出来たかなど)を交えつつ、劇は進んでいきます。
そしてプレイヤーが劇の方に集中したのを見計らうと、GMはさりげなく用意しておいたイベントを発生させるのでした。
GM:主役の吸血鬼(実はゲイル)が、宿敵の聖戦士を客人として城に招き、彼と昼食を共にする場面だ。ゲイルの席には赤ワイン――と見せかけた色付きの水(笑)が置かれている。もちろん果物の絞り汁か何かで、飲んでも害はないはずだから。
ゲイル:へいへい(笑)。台本だと、相手の詰問をはぐらかしながら余裕たっぷりにワインを飲むんだったな…(杯を干すポーズ)。
GM:するとね、リハーサルの時と違って水は激甘だった。メイプルシロップを煮詰めて角砂糖を20個ほど入れた感じ?(笑)
ゲイル:…ッ!?(噴き出すのを堪える演技)
GM:我慢して飲み干すなら〈生命抵抗〉しておくれ。吐き出してもいいけど、妹さんの劇は台無しになるだろうね♪(←鬼)
ゲイル:ぐっ…(ころころ)達成値は平均値で13だ。
GM:はいはい、それでは君は無事(?)にグラスの水を全部飲む事が出来た。演技続行…って所でネフィスの場面に移ろうか。
密かにほくそ笑むGM。長々と続いた舞台のシーン、実はこの水をゲイルに飲ませるためだけに用意されたものでした。
ゲイルにさせた〈生命抵抗〉も、『水を飲むため』ではなく『飲んだ水の効果に抵抗するため』のものだったりします(笑)。
目標値を教えなかったのも、判定に成功したか否かを気づかせないため…全てはGMの計算通りです(←悪魔)。
GM:さてネフィス。似顔絵を手に街で訊き込みをしているとだね、それらしい少女が大劇場の近くにいたという目撃情報が入った。
ネフィス:さっそく行ってみまーす♪
GM:(楽でいいなあ)劇場では何やら舞台公演の真っ最中らしく、外にはあまり人がいない。中に入るなら、入り口は一般客用の表口とスタッフ及び荷物搬入用の裏口があるけど。
ネフィス:(少し考えて)うーん…じゃあ裏口からこっそりと(笑)。
GM:ふむ。じゃあ〈知力判定〉で11以上出してみて。……成功?すると、奥の方から12〜3歳くらいの女の子が小走りに駆けてくる。
ネフィス:おっとっと、その子を呼び止める。似顔絵の子?
GM:残念ながら、顔は似ても似つかない。背格好はよく似てるんだけどね。子役のスタッフかも。不審気に君を見てるけど?
ネフィス:あれ、外れかあ?それじゃ、さっさと離れてから物陰に隠れて裏口を見張る。
GM:はいはい。さっきの子は外へ出て行ったよ。…で、暫く経つと先刻見たのとは違う服を着て再び奥から出てきた。
ネフィス:ふ〜ん、やっぱり劇団の子だったんだ。
GM:(おいおい)…ネフィス。目標値12で〈知力判定〉してみな?
ネフィス:へ?(ころころ)…成功したけど。
GM:さっきの子ね、劇場から出て行ったのは見たけど、また入って来たところは見てないよ。
ネフィス:???(←よく解ってない)え〜と、顔はさっきの子に間違いないんだよね?
GM:うん、同じ顔だ。衣装だけが違う。まあ入り口はここ(裏口)だけじゃないけど。
ギリギリまでヒントを出したつもりだったんですが、ネフィスは「きっと別の入り口から入ったんだろう」と納得してしまいました。
……あはははは(^_^;)。読者の皆さんは、GMが何を言いたかったのか…お解りでしょうか?
《変装(ディスガイズ)》:古代語魔法2レベル
術者に幻覚を被せて、別の姿に変える。呪文の持続時間は1時間程度。
幻覚は精巧なもので見ただけではそれと判らない…が、この呪文では身体の大きさや形を著しく変化させる事は出来ない。
せいぜい顔を別人のようにしたり体色を変えられる程度である。
よって痩せた者が肥満体になったり、人間がグラスランナーやドワーフの体格に見える事もない。
どうでもいいけどネフィス……あんた、やっぱり探偵業には向いてないわ(笑)。
女の子が30分後に戻ってからは特に何事もなく、ネフィスは舞台の終了後、表口から出てくる客をチェックして帰りました。
GM:…かくして、ゲイルの初舞台は無事に終了した。観客の反応も上々で、団長は「これからも頼んで良いかな?」と言うけど。
ゲイル:まっぴらです。
セレン:ゲイルさん…そんなこと言わないで、せめてヴィルマーの風邪が治るまでの間だけでもお願いします(瞳うるうる)。
ゲイル:……………………おぉ、やったるわい(泣)。
チェルシー:楽しかったですね〜お母さん♪
ルシアーナ:本当にねv …ゲイルの意外な本性も判ったし(笑)。
シャディール:ゲイル……気の毒に(←と言いつつ笑顔)。
とにかく一日が終わり、ゲイルの受難も終わったかに見えました。
…………んが。彼にとっての真の受難は、ここから始まるのであります(邪笑)。
【混迷 〜愛の嵐!?〜】
翌朝――――《夕闇亭》にて。
GM:今日は舞台はお休みだけど、団長とセレンから稽古に来てくれと言われてる。行くよね?(笑)
ゲイル:……おー…。
GM:部屋を出ようとドアに手をかけると、外からノックされた。「ゲ〜イル♪」と聞き慣れた相棒(カイト)の声が。
ゲイル:(不機嫌そうな顔で)……何だよ?
カイト:や、ちょっと儲け話の相談があるんだけどさ。ここじゃ何だから、部屋に入れてくんない?
GM、ここでカイトの〈精神抵抗〉判定をします。何のためかって?それは…。
ゲイル:(部屋に入る)…で、話ってのは?
カイト:……話?ああ、話ね…(上の空)。…あ〜、うん。ゲイル、お前働かずに毎日暮らせたらいいな〜とか思わない?
ゲイル:(思いっきり胡散臭げに)話が見えん。単刀直入に言え。
カイト:そ、そうだな、こういう事はハッキリ言わないとな。(咳払い)…ゲイル。俺の嫁さんになってくれ。
ゲイル:…………(あまりの意外すぎる台詞に理解が追いついていない)……何だって?
カイト:俺は本気(マジ)だぜ。ゲイル……愛してるんだッッ!!(がばっと抱きつき&押し倒し)
ゲイル:ぎゃああぁぁぁッッ!!??(絶叫)
どかばきぐしゃ――――べしッ。
ゲイル:ぜえぜえ、はあはあ……。
GM:さすがに2レベル違うと勝てないねえ(笑)。カイトは壁まで投げ飛ばされて気絶した。
ゲイル:縛り上げて、こいつの部屋に放り込んどく。外から鍵もかけるぞ。
GM:徹底してますなあ(笑)。作業を済ませて下に降りると、店内にはジェラルド氏が居るよ。
ゲイル:オヤジさん…俺、ちょっと外に出てくるけど…。(GMに向かって)変わった様子は…ない?
GM:別に?いつも通りの渋い笑顔で「そうか。急ぎでなければ朝食を用意するが?」と話し掛けるけど。
ゲイル:ほっ(安堵笑)。そうだな、今朝のお薦めは何?
ジェラルド:(渋い声で)お前のための特別フルコースだ。一緒に味わおう…奥の部屋で、な。
ゲイル:……行ってきまーすッ!!(遁走)
チェルシーのプレイヤー:GM…何もTRPGでヤヲらなくても(笑)。←実は同人系サイト持ち
GM:別にヤヲったわけではないんだけど(苦笑)。単なるギャグのつもりだよ、一応。
ええ、GMとしては本当に『やをい』のつもりはなかったんです(笑)。
プレイヤーがこう言ったので、冒頭には念のため警告文を入れておきましたが…もし不快になられた人が居たらごめんなさい。
以前のキャンペーンでは、亡霊の少女がPCの女性キャラを慕って付き纏うコメディをやった事もあるので、今さら違和感を感じる事もないんですけどね。…これって、やっぱり少数派でしょうか?(^_^;)
何かがおかしい…おかしすぎると多大な不安を覚えつつも、約束通り妹の待つ劇場に来たゲイルでしたが。
GM:君の姿を見つけると、セレンが笑顔で近づいてきた。「ゲイルさん、いらっしゃ…」と言いかけて足が止まる。
ゲイル:?どうした、セレン…。
GM:その瞬間、すぱーん!と景気のいい音を立ててセレンの平手が君の頬に炸裂した。
ゲイル:!?セ、セレン、何を…?
セレン:ごめんなさい、ゲイルさんの顔に虫が止まっていたものですから…(穏やかな微笑み)。
ゲイル:…そ、そうか?ありがとう…。
セレン:(物凄くそっけない声で)いいえ。ゲイルさんの出番は午後ですから、それまでは外で休んでらしてください。
背を向けて足早に立ち去る妹を呆然と見送るゲイル。心なしか、背中に哀愁が漂っています(笑)。
ゲイル:……GM。いい加減、これが異常事態だって気が付いていいよな?
GM:うん(笑)。何が起こってるか具体的に推論したいならセージ技能で〈知識判定〉して。
しかし無情にもダイス目が悪く、判定は失敗。『何かの呪いか、魔法の影響かもしれない』という事しか判りませんでした。
いずれにしてもゲイルにとっては専門外。仲間たちに相談しようと《遥かな歌声亭》を訪れます…が。
GM:さて、皆様。大方の予想通り、〈精神抵抗〉のお時間でございます(笑)。
チェルシー:(ダイスころころ)あら、ゲイルじゃないですか。そんな隅っこでどうしたんです?←抵抗に成功した
ゲイル:いや、その…よかったら外に来てくれる?(恐る恐る)
シャディール:(同じくころころ)何だろう、彼を見たら急に……この胸のトキメキは?僕はいったい…(笑)←抵抗失敗
ルシアーナ:(ころころ)……ふっ。おかしいわね、ゲイルを見てると……妙にムカツクわ。大体なあに?こそこそ物陰に隠れてこっちを窺うなんて、まるで怯えるウサギみたいじゃない。男らしくないわね。…本当に変だわ、あたし。どうしてこんなに腹が立つのかしら?…そう言えばゲイルって、初めて会った時にあたしたちを見捨てて逃げたのよね。なんて酷い男…次に会った時だって一人抜け駆けしてあたしたちの獲物を盗ったし。それに昨日の劇場で実はスケコマシの最低野郎だって…………そうよ、どうしてあんな奴を仲間だなんて思ったのかしら?うふ…うふふふふふふふふ(包丁を取り出す)。
ゲイル:…失礼しましたーッ!!!!(脱兎)
その後。川べりへ行ってむくつけき水夫の集団に拉致されかけたり、大通りへ出て男性の通行人に追いかけられたりと散々な目に遭いつつ(笑)劇場に逃げ込むゲイルでありました。
ゲイル:(道具部屋に隠れた)…はあ、はあ、ここなら大丈夫だろ…。
GM:と、安心している所を悪いが(笑)道具係の青年が扉を開けて入ってきた。「あれ、ゲイルさんじゃないですか?」
ゲイル:ぎくゥッ!?や、やあ何の用?
道具係:いえ、ちょっと舞台用の小道具を取りに来たんですが…(後ろに手を回す)がちゃり。
ゲイル:…『がちゃり』?
他のプレイヤーたち:もしかして、後ろ手に鍵をかけた!?(笑)
道具係:ゲイルさん……二人っきりですね(一同爆笑)。
ゲイル:嫌じゃああァァッ!!窓から飛び出すッ!
GM:小窓から強引に這い出ると劇場裏の路地に出た。すると、偶然にもそこに聞き込み中のネフィスが!(爆笑)
ゲイル:何が偶然だあっ!?どー見たって作為だろォがッ!!
GM:失礼な。ネフィスは今朝からずっと劇場近辺で捜査をしていたぞ。彼が最初にそう宣言している。(※本文では省略してます)
ネフィス:(抵抗判定ころころ)……げ〜い〜る〜ぅ〜vvv(瞳キラキラ、背景に青バラ)
シャディール:《眠りの雲》!!大丈夫ですか!?僕が来たからにはもう安心ですよ、ゲイルv(←間一髪駆けつけた)
ゲイル:お前だって同じ穴のムジナだろおおッ!!!!
チェルシーとルシアーナも合流し、一行は以前知り合った賢者ハウルに相談する事にしました。
ルシアーナ:(ゲイルを見つめて)ああ……斬りたいv
チェルシー:お母さん、落ち着いて(笑)。はい、《鎮静(サニティ)》。
GM:一応ゲイルに近づくたびに精神抵抗してね。目標値10以上で斬りかかるのだけは我慢できるから(笑)。
ゲイル:(ルシアーナに怯えつつ)そ、それで…こうなった原因の方は?
ハウル:う〜ん、たぶん《惚れ薬(ラブ・パッション)》の一種だと思いますよ。
《惚れ薬(ラブ・パッション)》:マジック・アイテム
いわゆる魔法薬(マジック・ポーション)の一種。
一般的には、『飲むか匂いを嗅いだ者が次に見た相手に恋をする』という効果で有名。
しかし今回の話で登場したのは、あまり知られていない変種(古代王国期には様々な亜種が研究・調合されたらしい)。
飲んだ本人は身体から特殊な匂いを発し、周囲にいる『特定の性別を持つ者(※調合時に決定)』を惹きつける体質になる。
但し副作用として、設定したのと逆の性別を持つ者には嫌悪感を抱かれるようになる。
なお、《惚れ薬》は独特の甘い芳香と味で判別が容易なため、通常は菓子やワインなどに混ぜて使われる事が多かった。
《鎮静(サニティ)》:神聖魔法1レベル
興奮・狂乱状態にある対象の精神を平常に戻す効果がある。神官が最初に覚える基本的な呪文の一つ。
但し一時的な狂乱状態は治せても、完全に発狂した精神を矯正する事は出来ない。
例えるなら『ガラスの汚れは拭き取れても、割れたガラスを元に戻したりは出来ない』というところだろう。
また、自然な感情か魔法の影響かに関係なく相手を落ち着かせる事が出来るが、原因を取り除けるわけではない。
故に恋人の死を哀しんでいる人などにかけても一時的な効果しか期待できない。
ハウル:…今回の場合だと、ゲイルさんが飲んだ《惚れ薬》の効果を消してから、影響を受けた人たちに《鎮静》の呪文をかければ解決できる事になりますね。
チェルシー:そんなの精神力が足りませ〜ん(笑)。
シャディール:今日一日でゲイルに惚れた男って何十人いるんだろう…?(笑)
ハウル:でも、変ですねえ?以前に文献で読んだ限りでは、あの薬の効果はそんなに極端ではない筈ですよ?せいぜい普段より少し好かれたり敬遠されたりという程度で…。調合した原液をそのまま飲んだならともかく。
ルシアーナ:原液って?
ハウル:ああ、この薬は本来10〜20倍くらいに薄めて使うものなんですよ。原液そのままだと効力が強すぎる上に、甘すぎて飲めた物ではないので。そんなもの、口に含んだ時に判りますからまさか飲む人もいないでしょう?(笑)
ゲイル:…………ハメやがったな、GM!!(一同爆笑)
プレイヤー的には『あの水』が怪しいと見当はついてたんですけどね。キャラ視点では判らないので知らない振りをしてた訳です。
しかし、劇イベントそのものがこのためだけの策略だとは気づいてなかったようですね(笑)。
ハウル:別の解決策としては、薬の中和剤を作ってもらうことですね。
シャディール:ハウルさんは作れませんか?
ハウル:もちろん無理です(きっぱり)。もし《惚れ薬》を作った人がいるなら、その人に頼むのが一番早いでしょうね。何しろ現在では《惚れ薬》の調合法(レシピ)は失われているので、作った本人でなければ判らないでしょう。
ゲイル:作った…かどうかはともかくとして、薬を仕込んだ奴ならプレイヤー的には心当たりがあるんだが。
一同、ネフィスをじーっと見つめる(笑)。
ネフィス:…え?え、何で?俺、何もしてないよ?
ルシアーナ:そうじゃなくて!あんた、劇場へ行った時に怪しい奴とか見かけなかったの!?(笑)
ネフィス:え〜と……もしかして、あの女の子のことかな?
殆どのプレイヤーは気づいていた筈なんですが、肝心のネフィスから情報が出てこなかったので今まで追及できなかったんですな。
やっとフラグが立ったので(笑)一行は劇団へ訊き込みに向かいました。
子役の少女:ええ、お使いを言いつけられたんですけど、廊下を歩いていたら急に眠くなって…気が付いたら何故か倉庫の中でした。
シャディール:《眠りの雲》で眠らされてたんですね。そうすると、最初に出てきたのは《変装》で化けた犯人ですか。
ゲイル:ネフィス、お前って……(呆)。
本当に、探偵向きじゃないって言うか…まあGMとしては切れ過ぎる相手より扱いやすいけどね(笑)。
全員で相談した結果、ネフィスの捜す『魔術師の少女』が犯人なら薬の効果を確かめに来るかもしれないという事で、一行は舞台で待ち伏せる事にしました。そして、再び公演当日…。
GM:ゲイルは吸血鬼役で舞台の上だね。観客席はキミ目当ての男性客で超満員だ(笑)。
ゲイル:嬉しくねえよ!
チェルシー:ゲイル、頑張ってね。応援し・て・る・か・らv(笑)
ルシアーナ:観客席の後から、上演中に怪しい動きをする奴がいないか見張ってる。
GM:それじゃあね、〈知力判定〉してみて。ゲイルも舞台上にいるから判定できるよ。
判定の結果、気づいたのはゲイル一人。彼は舞台の上からアドリブで演技しつつ仲間たちに合図を送ります。
ゲイル:所詮は愚か者よ、どれほど逃げようと逃げおおせるものでもあるまいに!(観客席を指差す)
GM:ゲイルが指差した辺りに、こっそりと出て行こうとする小柄な人影があるよ。
ルシアーナ:逃がさない!みんな、出口に先回りよ!!
通路に出た所で、シャディールとルシアーナが挟み撃ち。その少女はシャディールを見たとたん叫びました。
少女:げっ、ダークエルフ!!何でアンタがここにいるの!?
シャディール:あの…もしかして、知り合いだったりします?
GM:うん、実は(笑)。君の師匠は何かと問題児を受け持って…というかぶっちゃけ押し付けられてるんだけど、そのうちの一人。ラムリアース出身で少し前まで冒険者だった、学院最年少の正魔術師にして神官。フルネームはカル・クランだ。
ネフィス:カル・クラン?…って、あのカルか!?(←やっと気が付いた)
GM:その通り。ちなみに依頼人のファーシアンってのはルーヴェの事だ(笑)。
ルシアーナ:何でもいいから早く取り押さえるのよ!
カルは《石の従者(ストーン・サーバント)》を召喚して応戦しますが、しょせん多勢に無勢。取り押さえられます。
カル:やだっ、やめてよ!はなしてよっ、この人攫いーッッ!!!!
ルシアーナ:(ぷちっ)げしげしげしげしッ!(←殴ってる音)
素手とはいえ、4レベルファイターにボコられて魔術師が耐えられる筈もなく。カルはあっさり昏倒しました。
おりしも舞台はクライマックス。ゲイル演じる吸血鬼が、朝日を背景に塔から墜死する場面です。
GM:盛り上がりも最高潮、音楽と観客の声に紛れてゲイルの耳には微かに少女の断末魔(笑)が聴こえた。
ゲイル:(落ちる演技をしながら)終わった…やっと……(一同笑)。
【終局 〜そして、災難は…終わらない〜】
ネフィスの連絡によりルーヴェが駆けつけてからカルを尋問したところ、以下のような事が判りました。
最近錬金術師ギルド(学院とは別組織)に出入りしていたカルは偶然《惚れ薬》のレシピを手にいれ、常々憧れていた『お兄さまv』の気を惹くために自分で作る事に。
しかし出来上がったけれども効果をいきなり自分で確かめるのは怖い。そこで、かねてから『女たらし』と評判の男優で試してみようと思い立ち、ついでに手っ取り早く効果が判るよう原液のままで飲み物に混ぜた…。
カル:…というわけで、悪気はなかったの。お兄さまを愛するあまりの純粋な乙女心が招いた悲劇だったのよ、解ってv
ルーヴェ:人様にこれだけ迷惑をかけておいて、言う事はそれだけなのかな、カル?(カルの頭を掴んで締め上げる)
カル:……痛い、痛いのお兄さま(泣)。
ルーヴェ:皆さん、これは報酬です。本当にありがとうございました。あ、中和剤は必ず作らせますのでご心配なく(笑顔)。
ネフィス:……何ていうか…《惚れ薬》を作った理由が解ったような(汗)。
ルシアーナ:まあ一件落着してよかったじゃないの。あたしたちはタダ働きだったけどさ。
シャディール:問題児…僕、アレと同じ扱いなんですか…?(遠い目)
チェルシー:どうしてあんなのがラーダの神官やってるんでしょう…。
そして、《夕闇亭》に帰ったゲイルはといいますと。
ゲイル:《惚れ薬》の効果は消えたし、もうオヤジさんに会っても平気なんだよな?
GM:うん。《鎮静》もかけてもらったし、今はもう正気に戻ってる筈だよ。
ゲイル:オヤジさん、ただいま〜。晩飯と酒頼むよ。
ジェラルド:おお、大変だったらしいな。今夜はゆっくりするといい。
ゲイル:本当に…薬のせいで酷い目に遭ったよ。一時はどうなるかと。
ジェラルド:はははっ、あの時はすまなかったな。(食事を並べつつ)…しかしな、ゲイル。
ゲイル:ん、何?オヤジさん。
ジェラルド:(スッと顔を近づけて)…ゲイル。お前はまだ、自分の本当の魅力を解っていない。
ゲイル:…………は?(←硬直)
GM:ジェラルド氏はそう囁くと、ゲイルの目を見つめたまま…ニヤリと微笑んだ。
――――幕――――
……と、いうわけで第6話はここでお終いです(^_^;)。
経験値は使命達成分の1000点にカルとモンスター分を加えて1008点となりました。
レベルアップについては次の第7話冒頭で書く予定です。
ここまで読んで下さった方、お付き合い頂きありがとうございました。m(__)m
それではまた、近いうちに…は、無理かも(←殴)。
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